私の客を取らないで【鬼滅の刃】

逃亡拾捌 ページ19

「蕨姫っ！！！」


外に出て蕨姫を探した。
キョロキョロしたが居ない。
遅かった……。



「なによ、五月蝿いわね」

上から声がした。

え、上！？！？屋根の上に堕姫様がいた。


「アンタ登って来れるでしょ。来るなら来なさい」


「はい！」

言われた通り屋根の上に登る。
なんだか久しぶりに堕姫様を見た気がする。





少し屋根の上を歩くと堕姫様が止まった。

私も止まり下を見ると、道の真ん中にポツンと女の子が一人でいた。


「あれ、あんな所に小さな子がいますけど迷子ですかね？」



こんな時間なのに迷子？自分で言ってて疑問だけど、なんだか気になってしまった。


「さあね」


興味無さすぎじゃないですか？？




暫く見ていると、長い髪を結った男の人が小さい子を迎えに来ていた。

二人は久方ぶりの再会のように抱きついていた。



そしてそのまま手を繋いで歩き出した。

吉原の外へ出る門の方へ。








それを眺めてどうして吉原にいたのか、と疑問に思った。


その男の人が来ている着物と、男性にしては髪が長いのが引っかかる。



あの着物、今日見た気がする。
見る機会があるのは私のお客さんだけなのだ。







つまりあれは、津田様…？

いや、津田様はあんなに髪が長くない。
あんなに髪が長い男性などいるのだろうか？


あの髪の長さは女性並み。







…ん？女性？


ならば、なぜ男装を？

蕨姫の部屋の死体も男性だった。
着物は女性用だった。




あの男性は、津田様だったのだろうか…？


ならばあの男装してる人は…………




「堕姫様……殺したのは、津田様でしょうか…」


恐る恐る口を開く。
馬鹿げている考えなのは百も承知。

「………」



無言………！？！？
どっちですか！？！？




「あの方が着ているの津田様の着物ですよね。そしてあれは………帚木と、帚木の妹…」


それだけ言うと堕姫様が口を開いた。





「さぁ？帚木なんて子いたかしら？アタシ不細工は覚えてないの」


「だ、堕姫様〜〜！」



堕姫様が立ち上がった。





この方は……もう、本当に……


「大好きです！！！」

「五月蝿いわねぇ、知ってるわよ」


聞き飽きた、という顔をする堕姫様も美しくて惚れました。



「ですが堕姫様、津田様は私の客……」

「何？文句あんの？」

「客は取らないで下さい！！」

「不細工が何言ってんだか」




そう言って歩き出した背中を見て抱きつきたい気持ちを抑えた。

堕姫様一生ついて行きます。

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