私の客を取らないで【鬼滅の刃】

逃亡拾伍 ページ16

「……普通の人じゃないんじゃないの？」




確かに、くノ一よりも速く走れる人が普通の人なわけないけども。




「私だって、何か報告がある時背後に居るもの。気配がないの。」



「……そんな人、この吉原になんで…」






ボソッと呟いた疑問。

それに帚木が反応した。






「でもその人が犯人って訳でもないみたい。間接的に繋がって私に来てる。」

「犯人は顔もわからない人って事ですね」


これは厄介。

でもよくあることだ。
犯人が動くことなんて滅多にないだろう。




「そう言えば伝言ゲームみたいに伝えられてることがあるのを思い出した！」


考えている中、急に手を叩いてきたのでびっくりした。




「なんです？」







「えっとね、誰に向けてかは分からないんだけど、一言だけ。」






「はい」


























「『見つけた』」









え？












「………は、そ、それだけですか？」





一瞬、心臓が止まるかと思った。
ビックリした、いやそんなわけない。



天元様なわけない。






いやこれは願望。本当に、お願い。

これが私以外に向けての言葉であって欲しい。


だけど、足が異様に早いのも忍なら納得出来てしまう。


心臓がさっきからうるさくて、頭が痛い。
……違う、違う違う違う。




こんなたくさんの人がいる中、私に向けてだなんて無謀すぎる。
違うに決まってる。






「本当にそれだけよ。妹が何処に捕まってるのかもわからない。

男の人の名前もわからない。
だけど、あんたのお客であることは私が見たから分かる。」





その言葉にもびっくりした。

なんだ今日はエイプリルフール？？？






「私の……」



誰？？誰だろう？？？


津田様？野山様？井上様？今西様？高橋様？


まだまだいっぱいいる、わからない……。







「そうよ、あぁ、ほんと。どうにかしてよね、私もう嫌なの…はあ、参っちゃう……」





頭を抱え込んで溜息をつく帚木。

……その気持ちも分からなくはないけど…。



私もあの男が自分の客だなんて思っていなくて参ってます……。




「話してくれてありがとうございます…」



だが、本当にここまで聞けるとは思わなかった。

腹を割って話してくれた帚木を少し見直した。





「…じゃあ、お互い頑張りましょうね？」


と、帚木が手を振りながら言った。

あなたは頑張り過ぎないで下さいね。
死者出るんで。





だけどこの夜、帚木は消えた。

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