私の客を取らないで【鬼滅の刃】

逃亡拾壱 ページ12

今夜は常連客の今西様。


この方もかなりお金を持っているようで。
もう数えきれないくらいお会いしている気がする。




そんな常連さんとの宴会で油断していた。







運ばれてきた料理を口にした瞬間。

その違和感に、顔が引きつった。






「………」








毒だ。



まさか自分が狙われるとは。
どこかで安心していたのかもしれない。





気づいてよかった。





口の中で噛むふりをする。

そして気づかれないよう、手拭きで口を拭くかのようにしてそれを出した。





………くノ一やっててよかった………。







今西様の様子を見る限り、そっちの料理には毒は入っていないらしい。


ならばこれはやはり計画犯なんだな、と。





遊女を狙った毒殺だなんて、なんの得がある？

関係の無い人を事件に巻き込むなんて、犯人はこの手で潰してやる。








「今西様、お疲れでしょう？そろそろ休みましょうか」






料理などもう口にできない。


今西様が毒を取り込んでも大変なことになる。
ならもう床へ行った方がマシだ。









「もう、あの跡は無いんだね。良かったよ…」



床に入って今西様に言われた。

あの跡とは木下様につけられていた跡である。
木下様と床入りの翌日も私はほかの客との床入りがある。




隠す努力もしたが、バレてしまう時はバレてしまう。

特に今西様は心配してくれていた。






「こんなこと言ったらあれだけど…君がもうあの人に傷つけられなくて良かったよ…」


「ありがとうございます今西様」



優しい方なのだ今西様は。

そんな方が毒を入れるはず、ない。







寝静まった丑の刻。
蕨姫への報告をしに一人隠密行動。






その途中で見てしまった。





帚木が誰かと話しているところを。

こんな時間に起きている奴など私と蕨姫以外に怪しいヤツしかいない。


誰？？誰と話しているのだろう？？







「も、もう……お許し、ください……」



泣いて縋っているように見える。
くそ、角度的に相手が見えん。



「ダメだ」

男………？？




「私には…荷が重すぎますっ！！もう、いいでしょう！？」

帚木とこの男が毒殺事件の首謀者と共犯者なのだとしたらこの話の内容は理解出来る。




「…妹が、どうなってもいいのだな」


「………っ、」

その言葉に帚木の威勢が弱くなった。


妹…。
弱みを握られていたんだ。

それで仕方なく……。

……いや、なんも仕方なくないわ。
私殺されそうになったし。

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