私の客を取らないで【鬼滅の刃】

逃亡壱 ページ2

何処へ何時間走りっぱなしなのか覚えていない。

自由への逃走は容易に体力のゲージを上回れる。




やっと灯りが見えたと思うと、安堵して足の力が抜けた。


その場でへたり込んだ。





「はあーー………」

大きな溜め息をついた。
幸せなんてもう無いから逃げ出したっていいよ。




フラフラになりながらその灯りの元へ行った。

だが少しずつ灯りが消えていく。
もうそんな時間なのか。





「此処は……」












「あら不細工、此処はお前なんかが来る場所じゃないのよ」






え？向こうから声がする。

暗くて顔が見えない。
……けど、女の人を引きずっている。




「………」




「ここは夜の街、吉原。お前はとっとと豚小屋へお帰り」






女の人を喰いながらそう言うこの綺麗な人は、一体………。



鬼……？？？






不眠不休で走り続けたせいで私の顔は汚れ髪はボサボサ。

そりゃ豚小屋ともお友達になれるわ。







「…助けて下さい。怖い人が来るんです」



鬼に縋る私って……。





「はあ？アタシがなんでお前何かを助けなきゃいけないの？」

モグモグしながら喋る姿も美しい。


いやもうその通りです正論です。





「……大人だから」


特に理由などありませんでした。







「大人全員が全員チビを助けてくれると思わないことね」


「………」





…そりゃそうか。


そういう教育を受けてきたのに。







心身共に疲れていると頼りたくなってしまうのは人間の性か。






「あんた、アタシを見て怖がらないのね」





美人なその人は目ん玉を舐めながら言った。






怖い、というか、なんかもう疲弊しすぎて。








「別に不細工だから喰わないけど」



「そうですか…」







私鬼の役にも立てないらしい。


いいや自由になれるのならなんでも。






「………」


「………」






何この沈黙。

ジロジロ見られる。





視線が痛い。









「決めた、あんたを育てて私が最上級のデザートとして食べる」






急に断言されたのでビックリした。









「え」



「何？なんか文句あんの？」






「いえ、光栄です」






あの人以外ならもうなんでもいい。







美人で強いこの人が私を食べるその日まで、私はあの人から逃げ切ります。









☆遊郭、入ります__________

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