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「ったく、せっかくなら泊まればよかったのによー。」
ホテルのエントランスから出ると、
不貞腐れたように風磨が呟く。
『だって明日私も風磨も仕事でしょ。
始発乗ってもギリギリだって。』
「ま、別にホテルじゃなくてもすることはできるもんな〜。」
『変態。』
「聞こえませ〜ん。」
なんて言いながら両手で耳を叩く風磨。
さっきまでの大人の男感はどこへ消えたのやら。
目の前にいる彼はまるで園児のよう。
「何笑ってんだよ。」
『いや、子供だなーって思って。笑』
「はぁ?」
『ちょっと、ムキにならないで…っ、』
並んで歩いていた風磨が立ち止まって腕を引かれたと思ったら、
そのまま後頭部を押さえられてキスをされる。
『…っ、』
軽く舌を入れられて思わずぎゅっと風磨のスーツの袖を握る。
唇をペロッと舐めると、彼はドヤ顔で私から唇を離す。
『…ちょっと!!外っ…!!』
「悪いな。俺、変態で子供だから。」
『…もうっ!!』
バシッと肩を叩くと、独特の高い声で笑う風磨。
…その笑顔、悔しいけど可愛いから許してやる。
『ほら、帰るよ!明日起きれなくなっちゃう。』
照れているのを隠すため、何事もなかったように風磨の手を引き、駅へと足を進める。
それなのに、
「A。」
『何?』
「今日の格好、似合ってる。可愛いね。」
なんて、照れ隠しなんてお見通しみたいな発言をする風磨に敵うはずがなく。
一瞬で顔が真っ赤になるのがわかる。
「あれ〜?動揺したの〜?可愛い〜〜。」
『う、うるさい!!もう、知らない!!』
「待ってよ、Aちゃ〜ん。笑」
出た、風磨が私をからかう時に出るちゃん付け呼び。
ムカつく、と思いながらも、“ 可愛い ”という言葉に柄もなく喜んでニヤけてしまう自分を隠すため、
私は彼の言葉に振り返ることなく歩みを進めた。
もう、迷わない。
そう決心した夜。
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「A…?どういうこと…?」
歩道橋の上で私を見つけた
何も知らない“ 彼 ” に気付くことなく。
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彼との再会が、
新たな事実が、
私をまた、追い詰めていく。
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ichigomaple(プロフ) - えっえっえっ、caming soom、、?えっ、、えっ、?笑 (2021年12月15日 1時) (レス) @page41 id: 2d8d4d0b71 (このIDを非表示/違反報告)
m - コメント失礼致します。こちらの作品は少し前に執筆されているようで今更ながらですが読破させて頂きました。涙が止まりませんでした。はらはらどきどきした思いと愛について深く考える事ができました。これからも舞子様の作品を楽しみにしております。 (2021年9月1日 4時) (レス) id: ea118f12f8 (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - コメント失礼します。主人公に感情移入してしまい、泣いてしまいました。占いツクールでこんなに泣いたのは舞子さんの小説が初めてです。完結おめでとうございます!素敵な小説に出会えてとても嬉しいです。ありがとうございましたm(_ _)m (2020年5月15日 21時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
maron(プロフ) - 初めまして。凄く感動してドキドキしました。本当に実話であるんじゃないかってくらいお話上手で入り込めます。本当に良かったです。 (2019年10月25日 13時) (レス) id: c5d9cde9db (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - 舞子さん、いつもコメントさせていただいていました!完結おめでとうございます!本当に今まで歓喜あまって泣いてしまうとかあってほんとに切ないとこもあったけど、ほんとにこの作品はダイダイダイ好きです。これからも応援しています(^^)ありがとうございました(^^) (2018年11月25日 3時) (レス) id: a3d65aa3c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞子 | 作成日時:2018年3月16日 21時