蜜の味。４

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『そ、そんなの、ダメだよ…。』




嬉しい。
風磨の気持ちは涙が出るほど嬉しい。

でも…




『言ったでしょ。お腹の子は健人と私の子供なの…。

今はよくても、これから先、だんだん健人にも似てきて、自分の子じゃないことに嫌になるかもしれない。愛せなくて苦しくなるかもしれない。

私と生きていくことに後悔する日が来るかもしれない。

そのとき、どんなに後悔しても後戻りできない…！！

あなたのこれからの大切な時間を私が奪ってしまうことになる。

それだけは絶対に嫌…。』




そう、これが現実。

言葉でならいくらでも「大丈夫」って言える。

でも、この先、ずっと「大丈夫」が続くとは思えない。

私は「育てたい」と言う気持ちを大切にしようと決めた。

風磨が教えてくれた「自分の気持ちに素直に」なって。




だから、私の決断に彼の可能性を潰してしまえば、それはお互いのためにならない。

私の気持ちが、彼の足枷にはなりたくなかった。




好きだから、愛しているから、余計に。




私の言葉を黙って聞いてくれていた風磨。
泣きそうになりながら訴える私を落ち着かせるように、風磨はまた一段と強く私の手を握る。




「確かに、Aの言う通りだと思う。

嫌になることも後悔することも、あるかもしれない。

でも、それより。

たくさん笑って、たくさん楽しんで、たくさん喜んで。その回数を増やしていこう。」


『……』



「幸せになるのに、楽な道はないよ。

だから、辛いことも乗り越えないといけないし、
乗り越えた先に幸せがあると思う。

後悔したこともあったし、嫌なこともあった、でもそういうのひっくるめて幸せ。

そう思えるように、これから一緒に歩いていこう？

知らない世界、今度は3人で乗り越えていこうよ。」





『風磨……』





そんなこと言われて、平静になんていられない。
彼の告白に呆然とする私の頬に気付けば涙が伝う。

その涙を彼は優しく拭ってくれた。





「A、お前のことが好き。大好き。

次はさ、大切な子どもっていう新しい登場人物入れて、物語作っていこうよ。」





出会ったとき同じようなことを言われた。

あの時、この人にメルヘンな言葉は似合わない、ひねくれた彼を見てそう思っていたけど。

今は、全く逆。




だって目の前にいるあなたは、

愛と優しさに溢れたとても綺麗な目をしているから。

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