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夢であってほしい。
いつもは自力で起きるなんて有り得ないはずなのに、今日はアラームより早く目が覚めた。
でも、起きて目の前の現実を見たくなくて。
布団を被ったまま、ただ時間だけが過ぎていく。
仕事の時間が迫っていたから重たい身体を起こす。
俺の願いも虚しく、殺風景になっていた部屋。
彼女の荷物がないだけで、部屋はこんなにも広くなるのか。
そんなことを考えてみる。
「…子ども、か。」
最近ずっと体調悪そうだったのは、そういうことだったのか。
中島の家にいた期間。
俺に知らない2人の生活は、なんとなく想像はできていたけど、それがこうして目に見える事実として襲ってくるのはそれなりにきつい。
いや、かなり傷付く。
この先、Aと一緒に生きていく。
まだ始まったばっかりだったのに。
俺のこと好きだっていう気持ちはその程度のものだったのか、
どうして中島より俺に先に話してくれなかったのか、
どうしてそんな大切なことを一人で決めたのか、
かなりイラついたし、言い返してやりたかった。
現実はいまだに受け止められないけど、
一方的に出て行かれても、俺だって納得いかない。
でも、彼女の瞳は迷いがなくて。
Aのことが好きだから。
だからわかる。
きっと、俺が何を言っても考えを曲げないって。
それに、彼女が言っていたことは一理ある。
俺には、まだ二人を養っていけるだけの経済的余裕はない。
それ以前に俺が、父親になれるのか。
簡単に答えを出すことはできない。
だって、人生を変える大きなことだから。
だから、俺は余計その場の感情だけで、彼女に言い返すことができなかった。
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出会った当初は籠の中で生きることが、当たり前だった小鳥。
その小鳥が籠から放たれ、
自分の知らない世界を知り、
徐々に自分の意思を持ち、
そして行動できるようになった。
小鳥は立派に成長したよ。
次は自分が親鳥になる、覚悟を持ってな。
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ichigomaple(プロフ) - えっえっえっ、caming soom、、?えっ、、えっ、?笑 (2021年12月15日 1時) (レス) @page41 id: 2d8d4d0b71 (このIDを非表示/違反報告)
m - コメント失礼致します。こちらの作品は少し前に執筆されているようで今更ながらですが読破させて頂きました。涙が止まりませんでした。はらはらどきどきした思いと愛について深く考える事ができました。これからも舞子様の作品を楽しみにしております。 (2021年9月1日 4時) (レス) id: ea118f12f8 (このIDを非表示/違反報告)
藍色(プロフ) - コメント失礼します。主人公に感情移入してしまい、泣いてしまいました。占いツクールでこんなに泣いたのは舞子さんの小説が初めてです。完結おめでとうございます!素敵な小説に出会えてとても嬉しいです。ありがとうございましたm(_ _)m (2020年5月15日 21時) (レス) id: 82bbddf0f3 (このIDを非表示/違反報告)
maron(プロフ) - 初めまして。凄く感動してドキドキしました。本当に実話であるんじゃないかってくらいお話上手で入り込めます。本当に良かったです。 (2019年10月25日 13時) (レス) id: c5d9cde9db (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - 舞子さん、いつもコメントさせていただいていました!完結おめでとうございます!本当に今まで歓喜あまって泣いてしまうとかあってほんとに切ないとこもあったけど、ほんとにこの作品はダイダイダイ好きです。これからも応援しています(^^)ありがとうございました(^^) (2018年11月25日 3時) (レス) id: a3d65aa3c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞子 | 作成日時:2018年3月16日 21時