episode52 ページ4
*
『……わかりました。ありがとうございます。』
面と向かって言われると、
やっぱり辛いし、傷付く。
でも、わたしの中で何か変わる気がした。
泣きそうになるのをこらえて、
わたしは視線を落とした彼と目を合わせるため、
顔を上げる。
『お疲れ様でした。』
「君は?」
『…え?』
「俺のこと、好き?」
改ってなんでそんなこと聞くんだろう。
どこまでわたしを翻弄させたいんだろう。
『好きですけど。』
好きになってしまったものは仕方ない。
だからこそ、
精一杯強がって余裕の態度を取ろうと思った。
意地でも目を逸らさず、
強い口調で彼にそう告げる。
じゃないと、彼に全てを狂わせられそうで。
質問したのに、やっぱりじっとこっちを見てなにも答えない中島さん。
空気感にもうここにいるのが嫌になり、
ペコっとお辞儀をしたわたしは彼に背を向ける。
駅へと足を踏み出そうとしたわたしは
突如、一瞬で息が止まりそうになった。
『っ…』
あたりまえだ。
だって、後ろから腕を掴まれ振り返った瞬間、
突然彼の大きな手のひらに両頬を包まれたと思ったら
そのまま唇が重なったんだから。
目の前の出来事に頭がついていかなくて
わたしの心拍数は異常なほど上がっていく。
『好きじゃないって…っ、言ったじゃない…っ』
「うん、好きじゃない。」
『じゃあ、どうしっ…、』
唇が離れて、反抗するわたしの言葉を遮るように
また彼がキスをする。
今度はもっと深く、
息をするのが苦しくなるほどの。
拒もうと思えば
拒めるはずなのに。
わたしが拒まないってわかってるんだ。
ずるい。
なんてずるい男なんだろう。
いろんな気持ちが混同して
じんわりと目に涙が浮かぶ。
それなのに、
彼に腕を回して、彼のとろけるようなキスに答えてしまうわたしは
結局、彼が好きで好きで仕方ないんだ。
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楓子(プロフ) - 一年間くらい占ツクから離れてたのですが、久々に読んだらこのお話にどハマりしました!笑 (2021年3月3日 7時) (レス) id: 6aff9cb508 (このIDを非表示/違反報告)
あこ(プロフ) - 続きが気になります!どうなっていくんだろう。楽しみに更新待ってます (2020年11月26日 7時) (レス) id: 6ed94e9eec (このIDを非表示/違反報告)
ひこにゃん(プロフ) - 舞子さんこんばんは!最近セクゾにハマり舞子さんの小説に出会えました。Twitter探しても出てこなくて、もう他の鍵付きの小説は見ることができないのでしょうか?パスワードを教えていただきたいです( ; ; ) (2020年11月24日 0時) (レス) id: 7ea95f4951 (このIDを非表示/違反報告)
舞子(プロフ) - ぽんさん» ずっと読んでくださりありがとうございます( ; ; )完結できるように頑張ります! (2020年9月26日 23時) (レス) id: 63d5553da0 (このIDを非表示/違反報告)
ぽん(プロフ) - 3年前からずっと読んでます本当に大好きです (2020年7月8日 12時) (レス) id: 77b2a65c8d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:舞子 | 作成日時:2020年2月23日 23時