それでも、君と。 (ページ48)

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『七瀬さん！！』

病室に着くと、今日は扉が開いていて、
ベッドの脇に立つ彼女を見つけるや否や思わず声をかける俺。

いつもの病院の服じゃなくて、
可愛らしい私服を着ていた七瀬さんは俺の声を聞くなり、ニッコリと笑顔を向けてくれた。

「うっせーな。静かにしろ、中島。」

『あっ、ごめん…。』

「いいのいいの。こんにちは、中島さん。」

風磨をなだめると、
彼女は俺に近づいてぺこりと頭を下げる。

「毎日お見舞い来てくれてありがとうございました。おかげさまで無事退院できます。」

『俺は何もしてないよ。』

「ううん。毎日元気もらってた。本当にありがとう。」

優しい笑顔でそういう七瀬さん。

ああ、やっぱり彼女は彼女のままだ。

記憶をなくしても、

無邪気に笑う姿とか、話し方とか全然変わってない。

「おい、そろそろ行くぞ。」

大きな荷物を持った風磨が俺らにそう声をかける。

「はーい。」

『あ、俺も持つよ。』

「A一人分の荷物くらい俺だけで十分だし。」

『なんだよ、可愛くないな。』

「俺に可愛さを求めるな。」

「ふふふ(笑)仲良いんですね、二人って。」

風磨とそんなことを話していると、
笑いながら七瀬さんはそう言う。

「はあ？！それは断じてねぇし！」

『ちょ、そこまで否定すんなよ！』

「うるせぇ、さっさと部屋出ろ。」

『冷たいな、行こ、七瀬さん。』

「どさくさに紛れて２人になろうとすんな。」

『ってぇ！そんなんじゃねぇって！叩くなって！』

ポカだと頭を叩く風磨に俺が言い返す。

そんな俺らの様子を終始楽しそうに見ている七瀬さん。

よかった。

入院したときは、どうなるかと思ったけど

君に笑顔が戻って、

元気に退院することができて。

俺の心に引っかかってた重いものが、一つ取り除かれた気持ちだ。

そんなことを思いながら、

俺ら三人は、看護師さんたちに見送られて

大きな病院を後にした。