それでも、君と。 (ページ12)

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『相貌失認…』

風磨と呼ばれる彼と別れて、
まっすぐ家に帰った俺は、
さっきからずっとパソコンの前にいる。

彼女が抱えているものが何なのか詳しく知りたくて、

調べられるだけのサイトやブログを検索して漁るように読みまくる。

ネットの情報だけだから、彼女自身がどうなのか、わからないけど。

“ 相貌失認 ” とは、

簡単に言えば、人の顔が覚えられない症状らしい。

生まれつきの先天性や、事故による後天性のものなどあるらしいけど、根本原因はまだ明かされてないみたい。

また、軽い重いもあるようで、

重い人では、家族などの身近な存在の人でさえ顔を忘れてしまって、声をかけられても誰かわからず瞬時に反応ができないって書いてある。

そう踏まえた上で、今までのことを思い出すと、確かに納得がいく。

あの日、コンビニ帰りの彼女に声をかけた時、誰？みたいな顔をされたのは、本当にクラスメートの俺のことがわからなかったから。

そして次の日つまり今日、挨拶しても冷たかったのは、きっと話したことのないクラスメートが急に話しかけてきて驚いていたから。

帰りも同じだ。現に俺に誰？って尋ねてきたんだから。

彼女がクラスで話さないのも、
笑わないのも、きっとこの症状のせいなんだろう。

でも、

朝、彼女は俺の名前を呼んだ。

何かを訴えるような目で。

あの時だけは、俺のことがわかったのだろうか？

『あーーーー！！！』

頭が回らなくなって、
どっと、その場に寝そべる。

その時、別れ際にあの幼馴染の男に言われたことを思い出した。

“ Aは、お前が知らないところでたくさん傷ついてきた。

俺はもう、そんなAの姿は見たくない。”

“ 興味本位で関わっているなら、これ以上深入りしないでくれ。”

彼の声と瞳は、彼女のことを本気で思っていることが痛いくらいわかって、

その時の俺は何も反応できなかった。

仰向けになったままボーッとしていると、

あの夏の日の事が頭をよぎる。

俺が彼女の笑顔を初めて見た、少し前の出来事を。