雨の日の魔法【逆先夏目】

心の高鳴りの叢雨 ページ3

あの日から3日ほど経った。逆先くんが言った通り毎日一緒に一つの傘…つまり相合傘で帰っている。最初の方は抵抗もあったものの、3日もやっていると当たり前のように感じてしまう。
慣れとは恐ろしいなぁ、と1人ため息を零した。

この3日間なにをやったかというと、特に何もやっていない。ただ一緒に帰り他愛もない会話をするだけ。
いつもより距離が違い彼を見て、かっこいいなぁとかまつ毛長いなあとか思うこともしばしば。

そういえば私、魔法のためとは言えなんで逆先くんと一緒に帰ってるんだろう…なんてぼけっとしながら歩いてた刹那。




「危なイ！」

「へ！？」



急に右側に寄せられる感覚。突然のことに驚いた。足元には傘が転がっている。




「ど、どしたの逆先く_「どうしたのはこっちの台詞だヨ、ちゃんと前を向いて歩こうネ__怪我はない？」




前？そう思い顔を上げると目の前には電柱が。
うそ私電柱に気付いてなかったの！？と叫びかけたがそれ以上に今の状況だ。

さっき見た足元に転がっていた傘は私たちが使っていたモノ。そして私は今何かに支えてもらっている。という事は。




「け、怪我はない…けど、逆先くん、ちかい…」



自分でも顔が赤くなっているのがわかる。恥ずかしい反面、アイドルなのに雨に当ててしまっているのが申し訳なく、怒っているかもしれないと思い恐る恐る顔を見たが目の前の彼は1度目を見開いた後嬉しそうに微笑んだ。




「あァごめんね子猫ちゃん、ちょっと刺激が強すぎたかナ？_____でも魔法は効いてきたみたいだネ、よかっタ。」



最後の方はあまりよく聞こえなかったが上機嫌な逆先くんが「これ以上雨に打たれて風邪でも引いたら大変ダ」と言い、いつものように帰った。


少し、ドキドキしている自分に蓋をして。

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