22＊不釣り合いな空 ページ22
「寒いね、ほんと」
「ですねー。今日手袋忘れちゃったんですよ」
溜め息のついでのように、詩音は両手に息を吹きかける。
手袋使う？ と言ってみたのだが、先輩が使ってください、だって。
ほわっとした笑顔が詩音らしい。
そのせいか、白い息も心なしかほわほわして見えた。
「綿飴みたい」
「え？ 雲ですか？」
「違う違う、今日快晴でしょ。息、白いからさ」
「そっかあ。確かに、ふわふわしてますね」
綿飴っていうと夏祭りの屋台で買うイメージがある。
季節外れではあるけど、食べたくなってきた。
「あー、お腹空いてきました」
「そうだね。綿飴食べたい」
「いいですね！」
そんなふうに取り留めのない話をしていたが、不意に詩音が黙ってしまった。
何かを気にしているような表情。
おずおずと口を開いた。
「あの、花鈴先輩って、学校来ていないんですか……？」
「……うん。まだ、ちょっと」
詩音の家は知らないけど、花鈴ちゃんの家と近いところにあるのかも。
幼い頃からの知り合いだとしたら、気になるだろうな。
登校拒否。
一言でいえば、そうなるんだろう。
私が最後に教室で花鈴ちゃんと話したのは、五月ぐらいのことだ。
体育祭でも、文化祭でも、彼女とは会えなかった。
花鈴ちゃんは歌うことが好きだったから、文化祭の合唱コンクールでは一緒に歌いたいって思ってたんだけどな。
クラスで歌った曲は、彼女が好きそうなものだったのに。
「A先輩は、毎日これ届けてるんですか？」
「ううん。連絡カードは週に一度。変なプレッシャーになるのも困るから」
詩音は納得したように頷いた。
「また、遊んでくれないのかな」
ぽつんと零れた呟き。
詩音の表情は少し寂しそうだった。
私もそんな顔をしているなら、晴れ渡った空には不釣り合いかも知れない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 4人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しろひつじ(プロフ) - みまりさん» ありがとうございます!!何回も読んでいただけるなんて本当に嬉しいです。テンション上がりますか、すごい……！ (2015年2月13日 21時) (
レス) id: 6b5ba321da (このIDを非表示/違反報告)
みまり - ちょー面白くて何回も読み直しています! これ読むとテンションアゲポヨになります! (2015年2月13日 20時) (レス) id: 7a2b267fa6 (このIDを非表示/違反報告)
しろひつじ(プロフ) - みーゆさん» みーちゃん！嬉しい!!!自分のこととかも考えながら書いてますー。ありがとう、頑張る！ (2015年2月10日 14時) (レス) id: 6b5ba321da (このIDを非表示/違反報告)
みーゆ - すごいねー！つい読みふけっちゃったよー(￣∇￣;)白ちゃんの実生活とかが混ざっててちょーおもしろかった！愛読者になっちゃいます笑笑 更新楽しみにしてるね！教えてくれてありがとうっ(*^_^*) (2015年2月10日 14時) (レス) id: 06beca72c0 (このIDを非表示/違反報告)
しろひつじ(プロフ) - りるぽんず*さん» りーちゃん！！！ありがとう！！！コメントまでしてくれて本当に嬉しい！まだまだ模索中ではあるけど、妥協せずに頑張ります。りーちゃんの更新ラッシュを見習ってかきかきするね！ (2015年1月20日 17時) (レス) id: 6b5ba321da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
