聖なる夜の乙女たち (ページ11)

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その香りは雪と共に溶けていくページ11

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その人から漂う香りは私を酔わせる。

体全身が反応してしまうほどに、

それこそ「匂い」は「記憶」や「恋愛」に直結すると言うけれどその通りだと私は思う。

碧「重たない？大丈夫？」

A「あ、平気です」

碧「無理せんとってな」

A「……ありがとうございます」

大学1年生、家を出て初めての一人暮らし

初めての場所、初めての友達

いろんな初めてに囲まれる私は初めてのアルバイトを始めた。

人気の少ない路地にある静かな喫茶店

珈琲豆の香りとオシャレなインテリア

優しい店長と常連のお客さん

そして、1つ年上の金城先輩

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先輩に初めて会った時、ふわっと香るなんとも言えない匂いが私の体を、脳を、心を揺すぶった。

優しく包み込むような香りに比例するように

先輩はすごい優しくて、面白くて、仕事が出来る人

会う度に想いだけが増していった。

蓮「Aちゃん慣れた？」

A「はい、もうサンドイッチは楽勝です！」

蓮「ふふ、よかった……あ！そーだ！これ！」

A「もしかして試作品ですか？！」

蓮「そ～！あげるね！」

A「ありがとうございます！」

常連客の蓮さんは調香師

クリスマスも近いから新作を出さなくちゃ……と言いながら私じゃなくて金城先輩が作ったパフェを頬張る

碧「……香水？」

A「はい、試作品だとか」

碧「…………試しに付けてみ？」

A「いやでもお店に合わなかったら……」

碧「ええって奨さんそんな人ちゃうやん？」

じゃあ、遠慮なく。と言って香水をミストのように体に優しくかける

……この香り、金城先輩の匂いに似てる。

そんなことを考えていたから

金城先輩が真後ろにいて嗅ぐように首元に顔を近づけていたことに気づかなかった

碧「……………………ええ匂い」

A「ひゃっ！」

碧「あぁ、ごめんビビらした？」

A「大丈夫、です……………………」

全く、先輩はたまに距離感にバグが出る。

急に縮まる距離に驚いて身体中が熱くなった。

碧｢この匂い好きかも｣

A｢明日も付けてきますね｣

碧｢ええと思う｣

軽く笑った先輩はそのまま私を置いて表に出ていってしまった