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ふと、トントンと肩が人差し指で叩かれる。
振り返ると黒髪の前分けでショートカットの女の人がいた。同じ入学式の花飾りをつけている。

「ねぇ、あんたもしかして橘さん?」

背が頭一つ抜き出ては高い。少なくとも知り合いには居ないので若干怯えつつ答える。

「え?はい。そうですけど…」

「やっぱり。玲から聞いてた通り綺麗な目してる」

玲は透の従姉妹の名前だ。玲は透との従姉妹だが透よりもよく話す。そんな玲との会話を思い出しハッと閃いたた。

「もしかして、くまちゃん?」

「そう、熊谷友子。橘さんのことは玲から話聞いていたの。中学一緒になるなら気をかけて欲しいって」

くまちゃんは頼りになるの。かっこいいの。そしてかわいい。と何度か話題に出た人だ。
お互い玲を通してるのなら、自分がどんな風に伝えられているのだろう。

「奈良坂は?家隣なんでしょ」

「えっと、あっち。」

目線だけ送る。まだ友人と話しているみたいだ。

「ハァ…放置されてるわけ?」

玲はまだ私と透が仲良いと思っていたみたいだ。なにか誤解が生まれているので焦るように身振り手振りで否定する。

「小学校後半からはそんなに話してなかったから!私と居るより友達といた方が気が楽だろうし」

そういえば結局写真はどうなるんだろう。私は別にさっき撮ったし、母達はまだ話をしている最中だ。熊谷もこのまま私と話し続ける訳にもいかない。

「あのー」

こんどは男子が正面から話しかけてきた。今度こそ知り合いでもなんでもなく完全に初対面だ。

「俺こっちじゃ友達少なくて、良かったら一緒に写真撮ってくれませんか?」

「写真ですか?」

写真を撮ろうなんて言えたら友達なんてほいほい作れると思うのに。
とはいっても心細い気持ちは痛いほどよく分かる。共感して少し微笑んだ。

「はい。わかりま…」
「悪いけど、別の人に頼んでくんない?」
「熊谷さん!?」

私のセリフを遮る。断られて相手は戸惑っていた。
友達になろうと言ってるみたいなのにどっか行けなんて言われたら可哀想じゃないか。

「言ってる意味分かる?」
「いや、でも…」

お互い譲らない。初日早々バトルに周りの視線を感じ心臓が飛び出そうだ。
止めようよ、そう言って熊谷さんの袖を掴もうとした時だった。

「橘、写真取るんじゃなかったの?」

喧嘩を止めに来たのか、それとも偶然そのタイミングだったのか。またもや呼びかけられ、今度は不思議と安堵する。透は返答を待つように私を凝視した。

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nekotan2069puri(プロフ) - Part2ってありますか? (2021年1月31日 5時) (レス) id: 6b085184bf (このIDを非表示/違反報告)
豆腐ノ木(プロフ) - いやぁわざわざ待っててくれてありがとうございます!データは大事にします (2016年8月24日 22時) (レス) id: 2326a3abe8 (このIDを非表示/違反報告)
hikarika(プロフ) - 復活おめでとうございます!更新待ってますね! (2016年8月24日 21時) (レス) id: 8c72317fb5 (このIDを非表示/違反報告)
風間あかり(プロフ) - 風間さん……一体何人で飲みにいったの………? (2016年5月11日 13時) (レス) id: e3aa90e3eb (このIDを非表示/違反報告)
風間あかり(プロフ) - 豆腐ノ木さん» お疲れさま (2016年3月28日 17時) (レス) id: 55a9b6e827 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:豆腐ノ木 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2016年3月24日 2時

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