猫かぶりの裏の顔2【奈良坂透】 (ページ1)

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風呂から上がり脱衣場にて、洗濯機の上に置いてある携帯のロック画面を見る。

しかし、そこにはニュースの通知のみ。Aからの連絡は何一つ届いていない。

危機感を覚えつつ、ひとまず服を着てドライヤーは使わず適当に髪をタオルで拭いて乾かす。
いつもなら風邪をひくと怒られるのに、今は怒る人がいない。

帰ってようやく、自分の過ちを痛烈に感じた。

｢透｣

脱衣場から廊下に出ると、仕事から帰ってきた父親と遭遇する。

｢…父さん。おかえり｣

｢あぁ、ただいま。｣

簡単に挨拶をし、一緒にリビングへ向かう。音を聞いた母がラップに包んでいた夕飯を再び温めようと電子レンジに入れている最中だった。

｢おかえりなさい！｣

｢ただいま。今日はやけに豪華みたいだな｣

｢魚の刺身が安かったの。本当はAちゃんが頑張ってくるからって思ってたんだけど、今日はお友達の家に泊まるんですって｣

｢へぇ、珍しいな｣

二人とも、嬉しそうだ。Aの友好関係に良いが、友達の家に泊まったり出かけたりはあまりしなかった。だからか、突然だったが可愛い子には旅をさせろ的な嬉しさを得ている。

｢それで透が寂しそうなのか｣

｢えっ｣

｢そうなのよぉ、この子ったら何度も携帯確認してるの。ほんとベッタリ｣

両親の温かい目に酷く罪悪感がわく。とても喧嘩したとは言えなくなった。
非常に居心地が悪くなり、逃げるようにリビングを出る。

そして部屋のベッドに仰向けに寝転がり、大きなため息をついた。

湯冷めがきて、やっと冷静に考えられるようになる。

Aは悪くない。あの行動もAならどうするかと思えば想像するのは難しくないのだ。
乱戦でも冷静に考えられるのに、どうしてあの時は100％全部出水が悪いと分からなかったのか。

さらにさらに、一言でもメッセージがくると何度もロック画面を確認する自分の臆病さがなにより最悪だ。どうして自分から送らないのか。これでは彼女を責めているようなものだろう。これを玲に知られたら名前の通りキツい視線が飛んでくるのは間違いない。

時間が経つほど何一つ送れなくてとうとう9時半。焦るばかりで後退ばかりしている。