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「ん？Aちゃんも買ったんか」
「はい。簡単らしいので育ててみようかと」
手のひらを閉じれば収まってしまう程の小さな球根を2つ。少し茎が見え始めている。それを丁寧にビニール袋で包み、潰れないようにバッグの中に入れた。
「結局何にしたんですか？」
「これや、シクラメン。綺麗やろ？」
茎先に一輪ずつ咲く白とピンクのグラデーションの華やかなもの。丁度この時期が綺麗に咲く種類だ。
「縁起が良いんだって。次々と咲き続けるから絆とか。でも、病室には持ってけない。名前に死と苦が続いているから玲にはあげられないわ」
「日本語って難しいですね」
「まぁ俺らは死んでも騒いでそうやし。縁起がええもんと思うようしはるわ」
何事も考えようだ。良いことも悪いことも本人の捉え方次第。
言っちゃ悪いが。ボーダーの、しかも生駒隊室に置くような見た目の花ではない。多分とんでもなく浮く。
しかし、笑いが生まれるんだったら生駒隊ぽいっちゃぽい。うん、そういうことにしておこう。
「じゃあ、私は支部に戻ります。」
「今日は玲の家でランク戦の会議。」
「早速これ本部にいって見せてくるわ。」
生駒さんの悩み事も無事解決。自分も珍しく変わったものを買い満足である。
「...この商店街。どうやってくるんだっけ」
コロッケを食べに来る。しかしたまに、だ。一人で来ることはなく、京介だったり桐絵だったり。
歩いている間は会話をしているため道を覚える気はなくいつの間にか着いている。つまり分からない。
だが、文明の力。ぐーぐる先生というものがあれば分かったりする。
起動し、ここから玉狛支部と入力すると玉狛支部の位置が出てくる。経路を選択し道案内が出てくる。
「ん？こっち？」
一瞬矢印は端末の方向とまったく違う方を向く。
その通りに体の向きを変えたせいでまったく別の方向へ。
違うと気づくのは数歩歩いてから。最近は本部と支部の間を行ったり来たりしているせいで散歩していない。仕事場に行けたのは冬島さんの配慮。ちなみに生駒さんと熊谷さんは私の方向音痴を知らない。
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