エリン家11 ページ2
「なるほど、学はない」
バッサリと言われる。字もかけず礼儀も知らない。急に貴族になったところで見た目が小綺麗になるだけで中身は変わるわけがない。
「だが戦闘のセンスはある。未来予知も分かった。しかしイメージはあっても動く身体が無ければ役に立たん。
私が教えよう。安心するといい、こう見えて私は優秀なので」
知っている、とてつもなくスパルタなやつだと。
学よりも、戦う力を付けさせた。当主にするよりも、戦功を持って帰る猛将を育てることにしたようだ。
とにかく厳しかった。痣も倍に増え疲労で倒れるように寝るようになり、たまにベッドに辿り着かないことも。
しかし、衣食住は比べのにならないぐらい良いものだ。泥水を啜るような酷い食が、上層階級の豚よりも良いものを食べている。
ベッドも石のように固いものから、これは現実なのかと疑いたくなるほど柔らかいものに。おかげで、疲労も次の日には回復し鍛錬に集中することが出来た。
おかげさまで、１ヶ月でかなり成長した。剣の筋が見えてくるようになり、一方的に受けるだけでは無くなってきた。
「なかなか動けるようになったな。だが、まだトリガーを使う段階ではない。調子に乗って使って負ければそのまま死ぬぞ。
この国は甘くない。当主のためにもっと頑張ってください。」
ということをいつも笑顔で言って反撃の一撃を軽々と返し倒す。整った綺麗な顔だが悪魔のようだ。
「睨む感情があるのは結構。その調子でどんどんやる気を出してくださいね。大丈夫、肉付きも良くなってきました。剣も長く握ればそれ相応の手となるように、身体も成長に合わせて強くなります。
私は遺伝で細いですが、あなたは屈強な見た目になるかもしれないですね。」
「...ならない」
否定すると、ムッとした顔をする。
「例えばの話です。人は親から半分ずつ遺伝子を貰います。親のどちらかに似てますねーなんて言われるのはそこから。あなたは顔も髪も綺麗なので、前の親もそうなのでしょう。」
親...そんなのは知らない。知らないしどうでもいいことなので睨みはしないがなんとも言わない。
今の親は現当主。それに変わりはない。
「あんたが親って言った方がまだ現実味があるな」
「あんた、じゃなくてラスだと言っているでしょう。上官に殺されますよ」
人差し指で額をつつかれる。それだけなのに痛い。本当はトリオン体なんじゃないだろうか。
「ぐっ...」
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