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「これがこうで…だからこうなの。分かる?」
『あ〜そういうことね』
まるで呪文のような字で書きなぐるかのように
プリントの上をシャーペンが走る
「もっと読める字で書きなよ」
『え、俺は読めるけど?』
「そういうことじゃなくて…」
平野くんの答案用紙を採点する先生は気の毒だ
第一、彼が答えをきちんと埋めているのかさえ
怪しいところではあるけれど
.
右手でペン回しをしながら
プリントと睨めっこをする
彼のサラサラな栗色の髪を見つめる
気付けばそっと彼の髪を撫でていた
『何してんの』
「ん〜、髪の毛サラサラでいいなあって」
『そういうこと誰にでもしたらダメだよ』
私の手に重なった彼の手
若干熱を帯びた手のひらの熱が
私の手に浸透するような感覚
「平野くんに言われても説得力の欠けらも無い」
『どこら辺が?ありありじゃん』
「自分は色んな女の子触りまくってるくせに」
『触りまくってるって言うのは語弊があるなぁ…
あっちが求めることをこっちはしてあげてるだけ
サービス精神ってやつ?』
フッと笑った彼の方から
甘い香水の匂いが漂ってくる
やっぱりこの匂いは好きじゃない
.
「そんなに女の子と遊んでて楽しい?」
『別に?楽しんでるのは女だけでしょ』
「じゃあ、なんで…」
『委員長みたいなお子様にはまだ早いよ』
彼の世界を何も知らない私を
小馬鹿にしたように嘲笑う彼に
ほんの少し黒に染った気持ちの芽が
芽生えるのを感じた
「じゃあもっと教えてよ。平野くんのこと」
『俺と遊びたいってこと?』
「…そうじゃなくて」
『嘘。分かってるよ。委員長には出来ないし』
うっすらと作り笑いを浮かべた彼の手が
そのまま私の頭に乗せられ髪を撫でる
『そういうこと、簡単に言葉にしたらだめだよ』
いつもならここで手を払い落としているのに
この時は何故か、そうすることが出来なかった
教室の窓から差し込んだ月の光に照らされた
彼の表情はどこか寂しそうだったんだ
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むーちょ(プロフ) - ななみさん» そのようなお言葉を頂けてとても嬉しく思います。後悔の無いよう自分の持てる限りの力を発揮し、来月には笑顔でここに戻って来れられるように頑張りたいと思います…!少しお時間を頂く形とはなってしまいますが、最後までお付き合い頂けると嬉しいです(^^) (2020年1月14日 1時) (レス) id: f803838bc4 (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - むーちょさん、素敵な作品を読ませていただいてありがとうございます。受験生なんですね。お勉強大変でしょうが、春には希望の場所で新しいスタートが迎えられますように。体調を整えて力が発揮できますように…祈っております。 (2020年1月14日 0時) (レス) id: 6b92244ddf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:むーちょ | 作成日時:2019年11月15日 22時