きみの隣。TH (ページ10)

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#010 ページ10

「話さないとダメですか？」

確かにあの時私の様子が変わったのは事実だけど、そんな踏み込んだ話をいきなりテヒョンさんに話す勇気が無かった。

『うん、だめ。』

「え」

『だって、Aちゃんの話聞きたいもん。』

「なんで、名前…」

制服についているネームプレートを指さしてにやにやするテヒョンさん。

なんか、この人のペースがいまいち掴めない。不思議な人だなぁ。

.

「忘れたくても忘れられない人が居たんです。」

『忘れたくても忘れられない人…？』

「私が、世界で一番好きだった人。」

『好きだったって…もしかしてその人と、』

テヒョンさんが話している時に、厨房の方から私を呼ぶ声が聞こえた。

「ごめんなさい、私戻らないと。」

テヒョンさんに頭を下げてから個室を出ようとした時、さっきと同じように手首を掴まれた。

『いつ終わるの？』

「へ？」

『バイト！』

「えっと、あと1時間弱ですけど…」

『じゃあ、終わったらまたここに来てね。』

また後でね〜って言いながら手を振ってくるテヒョンさん。

終わったらまたここにって事はそれまでずっとここにいるってことだよね？

私、テヒョンさんを待たせるってことだよね？

「どうなってんの…」

平凡だったはずの私の毎日がテヒョンさんのおかげでなんだか違う方向へと動き出している気がする。