二十一刻 ページ23
「私はポートマフィアの首領だ。さっきは芥川くんがお世話になったね」
自分の喉からヒュッと息を吸い込む音が聞こえた
顔が青ざめていく
(あの時、逃げていれば)
後悔してももう遅い
元来た道を急いで駆ける
＿バァン
「い"っ！」
軽く撃たれた銃は、私の足を貫通して先へ飛んでいく
撃たれたせいで前のめりに倒れ込み、そのまま立ち上がることができなかった
見なくても感覚でわかる血の流れ
当たりどころが悪かったのか尋常じゃない程に出血している
(……貧血になりそう)
さっきまでグチャグチャだった思考回路は、1発にして全て消えて、どうでもいい事を一つ考えるのに精一杯になっている
(……もう無理かも…)
痛みと出血で意識を失いかけていた
「大丈夫、死なないよ。君には人虎を誘き寄せる為の餌になってもらうから」
薄れ行く意識の中、なんとなく聞き取った言葉
そして最後に見たのは、女の子が物珍しそうに私のフルートを見ている姿だった
目が覚めると、私はふかふかの天蓋付きベッドに寝転んでいた
綺麗な深紅で統一されたベッド
そこに繋がる不釣りあいな手錠は、私の手首に繋がっている
鎖は結構な長さがあるが、この部屋からは出られないだろう
ちらっと布団をめくり撃たれた足を見てみると、綺麗に包帯で巻かれていた
ガチャ
不意に扉が開いた
入ってきたのは先程の少女
コンコンとヒールの可愛らしい音を立てて此方に向かってくる
金髪青眼、華奢な体に透き通るような白い肌
まるで西洋人形のようだ
「ねぇ貴方名前は？それとこれ吹いてみて！」
見た目に合った可愛らしい声で話しかけられる
その手には私のフルートが乗っていた
「ぇ……あ、雨宮です」
「下の名前は！」
「ぁ、A……です」
「そう、A！吹いて！」
半ば強引に聞き出した名前を確認するように復唱し、フルートを押し付ける
それを渋々受け取り組み立てる
普段なら呼吸法やストレッチ等色々行ってから吹き始めるが、彼女のキラキラとした眼差しの圧力には耐えられなかった
ピィー、とチューニングが合っているかもわからない基本の〈シ♭〉の音を吹く
これだけでは流石に怒られそうなので、すごく簡単にキラキラ星を吹く
ソソドドララソ
できるだけ彼女が満足出来るように、丁寧に奏でる
敵組織の子だろうと、曲を聴く時は皆一人のお客様なのだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 487人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナオミ←本名ww - 夢主さん・・・華さんに嫉妬していましたのね・・・大丈夫ですわ！ナオミだって物凄くお母様に嫉妬していましたの！お母様は兄様にしか愛を注いであげていたのにナオミには愛を注いでくれなかったんですのよ！非道いですわ！ (2018年5月18日 18時) (
レス) id: 82a269b100 (このIDを非表示/違反報告)
つっきー - 夢主ちゃんが悲しすぎます！ もうすこしだけ更新してほしいです、お願いです！ (2018年4月2日 16時) (レス) id: 2ed9afabdf (このIDを非表示/違反報告)
キキリア - もう完結ですか？そうでなければ更新頑張ってください！！ (2018年3月26日 17時) (レス) id: cae09e118c (このIDを非表示/違反報告)
ホデリ(プロフ) - すごく人間味があってとても好きな作品です！！ (2018年3月14日 6時) (レス) id: ed3662b0d9 (このIDを非表示/違反報告)
妹舞 - とても好きなお話です！更新頑張ってください！ (2017年10月30日 23時) (レス) id: dffb3f017a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レモンキャンディ | 作成日時：2016年7月28日 3時
