ヒースクリフの婚約者様は…？【まほやく】

59. ページ21

「よっと……。」
『ちょっとシノ！』
「シノ！墓穴に入るな！」

「見ろ。埋葬品には手を付けてない。真珠も金も残ってる。」
「なら、なんのために……。」
『…墓泥棒じゃないってこと……？』

「遺体は？」
「……え……？」

「棺の中に遺体は入っているか。」
「確かめてみよう。」
「重いだろ。手伝うよ。」

「棺を開けるんですか！？亡くなった人が眠ってるのに……。」
「その通りだな、ヒース。死者には深く詫びておこう。僕が祈りを捧げておく。

だが、気になることがある。確かめてくれ。」

「気になることって……。」

「僕たち魔法使いは、心や、自然の、神秘の力を使う。〈大いなる厄災〉もそのひとつだ。〈大いなる厄災〉が近づく時、その神秘の力も増す。世界が脅威にさらされているのに、不謹慎かもしれないが、その時期を狙って、儀式を行う者も多い。」

『〈大いなる厄災〉の力で儀式を行う……？』
「……〈大いなる厄災〉の力を借りて、何か儀式を行った人がいるって、ことですか……？」
「そうだ。」

「………。これは……。」

「ど……、どうだった。」
「空だ。」

「空……？」
「棺の中には骨の一欠片も入ってない。他の墓も、もしかしたら、全部同じかもしれない……。」

「いくつか確かめてくる。」
「お……、俺も手伝う。」
「無理するな。おまえは棺に触れなくてもいい。賢者様と一緒にいろ。」
「……わかった……。」

『………。』

〈大いなる厄災〉によって増す神秘の力……。

その力で儀式を行う罰当たりな者たち……。

消えた遺体……。



『亡骸を贄に儀式をした……？』

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