【歌い手】貴方の、本当の心を。【まふまふ】 (ページ2)

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プロローグ・1 ページ2

深い、深い霧の中。私は、真っ白な空間を、ゆっくりと歩いていた。

霧の中にいると、なんだかどんどん不安になって、落ち着かなくなっていく。勝手に胸が苦しくなって、涙がこぼれる。苦しい。悲しい。気持ち悪い。そんな気持ちばかり溢れて、止まらない。

だから、早く。とにかく早く此処から抜け出したくて、足を速める。けれど、まるで重石を引きずっているみたいに、身体が重い。呼吸も、だんだん、だんだん荒くなっていく。

霧が濃くなる。冷たい悪寒が身体をまわる。全身が痺れて、意識が薄れる。もう立っていられない。目が開いているのかどうかさえ、わからない。

「つっ……………ぁ、ぐう…………はぁ、はっ……」
一瞬呼吸が楽になり、宙に浮くような感覚の後、私の意識は溶けていった………。

「愛莉！愛莉！」
誰か私の名前を呼んでいる。グラグラと、意識が揺さぶられる感覚がして、目を開いた。

「……んっ」

「愛莉っ！」
「おねーちゃん！」
「大丈夫か！？」
「目を覚ましたの愛莉！？」

いきなり、耳に大量の声が流れ込んで来た。声のする方へ視線を向けると、見覚えのある四人の男女が、私を覗き込んでいた。

「お、母さんに、お父さん？…………美桜、と瑠衣まで」
私が呟いた途端、私の妹、美桜が、ドンッと私に飛びついてきた。私の重さに美桜の重さが加わり、寝かされていたベッドが微かに軋む。

「ぐあぁっ……ちょっとやめてよ美桜！…………美桜？」
慌てて払いのけようとして、ハッとした。美桜が泣いているんだ。

「あ………み、美桜？一体何が………」
「おねーちゃんが……」
「え？」

嗚咽の間からうっすらと漏れる、美桜の声。私が聞き返した次の瞬間に、蚊の鳴くようだったそれは何倍にも膨れあがって、病室に反響する。

「お姉ちゃんが、生きてたーっ！」
「へ？………ええっ？」
「お姉ちゃん、生きててくれてるっ、死んでない、生きてる。お姉ちゃんが、生きててくれてるっ！」

どういうこと？私…………あれ？訳が分からなくなって、ベッドの脇に立つ、他の三人の方を向く。だけど、みんな目を赤く腫らしてグズグズと泣いているばかりで、何も話してくれそうにない。しばらくしてようやく、私の友達、瑠衣が、説明してくれた。