魔法科高校の劣等生 (ページ7)

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《司波達也》

驚いた。の一言に尽きる

まさか未だに紙の本を読む人がいるとは…

だからと言って喋りかけるほど彼女に興味は湧かなかったので有り難く隣に座らせてもらい、情報端末に落としている書籍データへ意識を向けた

しかし、また気が付いたのだが
未だに底の厚い眼鏡、いや、眼鏡自体を掛ける人がいることに驚いた

現代では眼鏡を掛けるのは余程の先天的な視力異常者だけだろう
物珍しい、それが彼女に抱いた最初の印象だ

しばらく読書をしていたが、彼女が喋りかけることはなかったので思う存分没頭した
入学式開始、30分前
開いていた端末に時計が表示され、意識が現実へと引き戻される

引き戻されたと同時に彼女は立ち上がり足早に会場の方へと歩いていった
何か急ぐことでもあったか？と思いつつ書籍サイトからログアウトし、端末を閉じ立ち上がろうとする

ちょうどその時、頭上から声が降ってきた

…まさか、近付いていることに気づいたのか？

気が付いた、と仮定すれば足早に去って行ったのも頷ける

知らずとその後ろ姿を見つめてしまっていた

記憶に残っているのは底の厚い眼鏡ときっちりと結われたお下げ髪
…そして自分と同じ花弁のないブレザー
後で探そうと心に決めたのだった

「新入生ですね？開場の時間ですよ」

という声に意識が戻される

まず目についたのは制服のスカート
そして、左腕に巻かれた幅広のブレスレット
普及型より大幅に薄型化され、ファッション性も考慮された最新式のCADだ

CAD …術式補助演算機
デバイス、アシスタントとも呼ばれている。この国ではホウキという呼称も使われる

魔法を発動する為の起動式を、呪文や呪符、印契、魔方陣、魔法書などの伝統的な手法・道具に代わり提供する、現代の魔法師に必須のツール

一単語、あるいは一文節で魔法を使い分ける呪文は今のところ開発されていない。呪符や魔方陣を併用したとしても短くて十数秒、ものによっては一分以上の詠唱が必要なところをCADは一秒以下の簡易な操作で代替する

今やCADを使わない魔法技能師は皆無に等しい
現代のCAD普及率はほぼ百％と言えるだろう

そして彼の記憶によれば、生徒で学内におけるCADの常時携行が認められているのは生徒会の役員と特定の委員会のメンバーのみ

これはまた厄介な人が声を掛けてきたな、と思うのであった