爪先へのキス ページ23
Aが、フョードル ・Dと出会い、死の家の鼠に居座り始めたのは丁度A自身が異能持ちだと知った秋から数ヶ月後の冬。それからというもの、組織にいるにも関わらず、他の組織に入っては出を繰り返していた。が、初めに出会ったこの死の家の鼠から抜ける事はなかった。
ふわり、といい匂いが鼻腔をくすぐる。リビングへ行くとちょうどフョードルが紅茶を淹れていた。テーブルの上にはAお望みのお茶菓子。
『!メドヴィクじゃん……!』
ロシアのお菓子を目の前にパアッと目を輝かす。それも束の間、神妙な顔でフョードルを見る。紅茶をテーブルの上に置きながら「どうかしましたか?」と一言。微笑みは常に浮かべたままだ。
『お前、自分が此処に来ること鼻から分かってただろ』
D「何故?」
『そうじゃないとこんなお菓子があるわけ無い』
なんと言ってもメドヴィクはロシアのお菓子の中でもAの大好物だからだ。目の前のロシア人は相変わらず微笑みながら、静かに切り分けたケーキをお皿に乗せる。
D「相棒ですから。貴方にとって僕は、ね」
ス…と目の前にケーキが乗ったお皿が視界に入る。しかしAは受け取らない。
D「食べないんですか?」
『食べる。が、一つ訂正しろ。貴方にとって僕じゃなく僕にとって貴方がの間違いだろ』
D「…相変わらず細かい人だ。でも現に、相棒だったのには変わりないじゃないですか」
『だから元相棒、の間違いだよ』
フョードルからケーキ皿を受け取ると、フォークを突き刺し口の中に放り込む。久しぶりに味わう味覚に一切れをぺろりと平らげる勢いだ。
D「それで、此方にはどれくらい滞在するつもりなんですか?」
『2年』
D「では、ゆっくり出来ますね」
もう一切れ、と伸ばしたAの手をフョードルが掴む。そして流れるように顔の前に手を持って行き、爪先にキスを落とす。
『…それ、嫌いなんだけど』
D「2年間、此処にいるならお手伝いしてもらいますよ」
『報酬は?』
D「貴方の好きなデザートを、好きなだけ」
『乗った』
2年。魔人のもとに死神が帰ってきたという噂は、この間欧州諸国でまことしやかに流れることになる。
【爪先へのキス】
意味…恋愛感情ではなく、神のように崇め、心から敬うこと、崇拝
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時