もう1人のマイキー【東卍】

31話 ハロウィンパーティー ページ34

『ごはーん…』


エ「お兄ちゃんおそーい！」



時刻は朝。エプロン姿のエマのお小言を軽く流しながら、Aは自分の席に座るとふわりと味噌汁の良い香りが鼻腔をくすぐる。前の席の万次郎はもう起きていたらしく(頭は爆発しているが)もそもそとご飯を食べていた。


『…万次郎、今日何時に帰ってくんの？』


マ「んあ？……わかんねー」



唐突に帰宅時間を聞かれたマイキーは、頭にはてなを浮かべたような顔をして味噌汁を啜る。エマもそれが気になったのかこちらを見ながら目玉焼きを口に運ぶ。



『明日ってさ、ハロウィンだろ？』


マ「ウン」


『せっかくなら夜にハロウィンパーティーやらね？』


エ「えっやりたい！」



パアッと顔を輝かせ、嬉しそうなエマと対照的にぽかんとした顔をするマイキー。



マ「(2年前のオマエだったら、絶対ンな事言うキャラじゃなかったのに…)」



マイキーの脳裏に浮かぶのは2年前この世を去った兄貴。シンイチローが死んでから、Aはまるで取り憑かれたように兄貴と同じ振る舞いをする事がある。そして今も。



マ「(あの救急車ン中で、兄貴になんて言われたんだよオマエ…)」


『万次郎もいいよな？』


マ「えっ、？」


エ「もうマイキーまだボーッとしてるんでしょ！！明日のお菓子の材料買いに行くけど、一緒に行くの？行かないの？」


マ「……行く」


『よしっ決まりだな！』



にかっと笑うA。その笑顔もシンイチローそっくりだ。その後エマとAはなんのお菓子を作るかの話で盛り上がっている。ちらりと隣を見れば、お茶を飲みながら微笑ましそうに孫たちを見るじいちゃん。



マ『(A…オマエは十分すごいヤツだよ)」



オマエがいないと、オレ達はきっとここまで笑い合えて無かった。無意識にAをじっと見つめていたのかばちりと目が合う。



『どうした？』


マ「A、」


『ん？』


マ「ケータイ、光ってるけど」



そばに置いてあったAのケータイがメールを知らせるように青い光が点滅していた。誰だ？とメールを開けば、送り主は最近一緒に銭湯に行ったタケミチから。今日会えませんか？と添えられた文章に、特に考えることもなく午後からならいつでもと返事をする。



エ「あっ！ご飯食べてる時にケータイ触らないの！」


『ごめんって』


マ「誰から？」


『タケミっち、会いたいんだって』


マ「ふーん…」



約束の時間を取り付け、Aは少し冷めた味噌汁を口に運んだ。

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