もう1人のマイキー【東卍】

11話 宿題と麦茶 ページ13

場地家



窓からのぞく空は晴天。机の上には大量に置かれた教科書とノート。カラン、と音を鳴らすのは麦茶に入った氷。場地圭介はまたもやウンウンと1人唸り声を上げていた。そう、夏休みが始まったのだ。



場「〜〜っアーーわっかんねー！！！」



ダンッと机を叩けば先程以上に氷の音が鳴る。本来夏休みは学生にとって最高のイベントともいえるのだが、その分大量の宿題に追われる地獄のイベントでもある。そして場地は一筋の光とでも呼ぶべき救世主へと電話をかけた。


数十分後


『よっバカ圭介助けに来てやったぞ♡』


場「バカは余計だバカA！！」


『あ？バカって言った方がバカなんだよバーカ』



小学生並みのアホな口喧嘩をしている救世主は幼なじみのA。普段の素行から思いもよらないが、Aは勉強を教えるのがうまい。要は頭がいいのだ。中学の勉強なんて好き勝手やってても卒業出来るだろフツー、とシュークリームを食べながら話すAにだよな！！と元気よく応えた翌日、先生から留年と言われたショックを未だ鮮明に覚えている場地。



場「お前夏休みの宿題やった？」


『あんなの最終日にやれば間に合う』



これが本当に毎年間に合っているのだから密かに感心する場地。宿題を再開し、カリカリとシャーペンが紙をなぞる音と時折りAが口を挟む。すると、何かを思い出したように「あ！！」と声を上げる場地。



『なに？』


場「武蔵祭りさ、一緒に行けなくなっちまった…」


『は……』



なんで？と聞けば、丁度その日にメビウスとかいうチームと抗争があるらしい。



『誰が決めたんだよわざわざそんな祭りの日に！』


場「マイキー」


『死なす』



おいヤメロ！！とAの腹にしがみつき精一杯止める場地に離せオレのりんご飴ぇ！！！と謎の言葉を叫ぶ。佐野家の双子の喧嘩は洒落にならない程周りに危害を及ぼす事を幼なじみである場地はイヤというほど知っていたので、想像するだけで顔が青くなる。



場「そうだ！海！海行こうぜ！」


『うみぃ〜……？』


場「抗争終わったらさ、東卍のみんなで！」


『海……』



にぱっ、と八重歯が見えるほど笑う場地。海…ともう一度Aが呟けば「かき氷奢ってやンよ」と言われそれで納得したのかAもまたぱっと顔が綻ぶ。



『約束だからな！』



2人で小指を絡ませ指切りげんまんをすると、また宿題へと向き合うのだった。

12話 大事なモノ→←10話 あなたの面影を追う

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す