誕生日プレゼント（緑）2 (ページ26)

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そのまんまドラムんとこから動けんとおったら

ガチャッとドアが開く音がした

ゆっくり顔を向けると

そこにはお日さまみたいな笑顔のまるちゃんが

お弁当とお茶持って立っていた

それから急に真面目な顔をして

｢大倉殿｣

｢腹が減ってはドラム叩けませんぞ｣

やけに芝居がかった口調でそう言うたら

時代劇みたいにゆっくりとすり足して

部屋の隅に置いてある椅子に向かった

｢ほら早よこっちこっち｣

そう言うて手招きしてくれる

その優しい声に促されるようにまるちゃんの側まで行く

｢おーくら？｣

｢ちゃんと食べんとあかんよ？｣

そう言うて差し出してくれたお弁当の上に

俺の好きな和菓子がひとつ乗ってた

｢早よう食べよし｣

そう言うて俺の頭をくしゃっと撫でてくれる

｢...うん｣

鼻の奥がツンとなって

まるちゃんの顔を見ることもできんまま

唐揚げをひとつ口に入れる

｢...旨い...｣

やっと絞り出した声は情けないほど震えとった

｢ほんま旨いな｣

まるちゃんはあの優しい声でそう相槌をうってくれたあと

黙ったまんま俺の横でお弁当を食べてくれて

少しだけ触れ合った肩から伝わる

俺よりちょっとだけ高い体温のあたたかさと

いつもよりしょっぱいお弁当が

たまらなく心にしみた