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デビューしたての俺らがやらせてもらってた
関西ローカルの深夜番組についてくれてたおばちゃんメイクさん
経費削減か知らんけどスタイリストも兼ねとって
若い子のセンスからはズレてんねん
ってツッコミたくなるような
レディースと呼ぶんさえ躊躇うような
おばあちゃんが着るような衣装持ってくるクセに
俺らの私服にまで文句つけてくる
そんなおばちゃんメイクさんのアシスタントに付いてたんがあいつやった
いつも泣きそうな顔でおばちゃんの顔色ばっか伺ってた新人のアシスタント
オドオドしとるさかい余計失敗して
自販機と観葉植物の隙間に隠れて泣いてばっかやったあいつ
俺らも仕事もそうそうあらへんし時間だけはあったから
ＣＭとかでは見たことあらへん50円のジュース二本買うて
あいつの涙が止まるまで一緒におるんが
いつの間にか収録終わりの俺の密かな楽しみになってた
でも俺らもそのうち少しずつ忙しなってって
電車ちごて事務所の車で帰るようになって
そぉなったら勝手に残る事が出来ひんよなってもた
あいつはあいつで
おばちゃんメイクさんが引退しはったから
違う先輩に付くようになって
顔を合わすことさえ難しくなってった
若くて幼い恋が
自然消滅した...
それだけの話やん
けど
俺は10年前に買った
あの日
あいつの誕生日に渡すはずやった
やっすい指輪をまだ捨てられずに大切に持ってる
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作者名：UTA
| 作成日時：2019年5月8日 19時
