耳元で歌わせて（赤）9 (ページ2)

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ムゥーってしてカメのぬいぐるみ抱きしめて拗ねてまうわ

『あっ！Aちゃん？』

『すばるのアホには言うててんけどな？お正月すばると一緒に帰っておいで』

『出来たら一晩くらい泊まっていき？』

あっ！すっかり忘れとったわ

そういや後から連絡する言うてたんやった

それにしても俺の事アホアホ言い過ぎちゃうか

｢えっ？...でも...｣

Aちゃんがちらりと俺に視線を寄越す

『Aちゃん？』

『遠慮しとんやったらそれはちゃうよ』

『旦那の実家に帰るんは嫁の務めやよ』

キツく聞こえる言葉とは反対に

おかんの声はこれ以上ないくらい優しかった

『Aちゃん？』

『家族でお正月過ごそ？』

『ええね？』

おかんの言葉にAちゃんは返事も出来んと

スマホ握りしめてぽろぽろ涙を流してた

びっくりして俺は急いでAちゃんの肩を抱いて

今の今まで自分の頭摩ってた左手を

Aちゃんがスマホ持ってる左手に重ねた

｢年越しは二人でしたいさかい一日の昼にこっち出てじぃちゃんち寄ってから帰って一泊するわ｣

｢渋谷のおじいちゃんちは今年も二日に行くんやろ？｣

｢そんとき俺らも一緒についてってそのまんまこっちに帰るわ｣

『分かった』

『ほな楽しみにしてるさかい気ぃつけて帰っておいでな』

｢はいよ｣

電話切ってAちゃん見たらまだぽろぽろ泣いてて

電話代わる前の勢いからは考えられへんくらい頼りなげで

その泣き方は小さい子が泣いてるみたいや

｢Aちゃん？｣

｢正月何か考えとることあった？｣

｢おかんあんなふうに言うてたけど嫌やったら嫌って言うたらええねんで？｣

Aちゃんの顔をのぞき込むように言うたら

Aちゃんは目を伏せてゆっくり首を振った