誕生日の話 (∞紫) (ページ23)

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けどそんな風に感じる事さえ許されへん

間違えたらあかん

俺が

俺が･･･

二人で過ごす明日を一時の感情で手放したんやから

一緒に明日を見つめるんにはええ事ばっかやあらへん事も

近しいからこそ相手を思いやらんなん事も

相手のほんまのほんまの気持ちは分かったつもりになったらあかん事も

ここ数年で誰よりも思い知っとったのに

その事すら忘れるほどにAに甘えてたんは俺やったやん

改めてそう自分に言い聞かせながらIHのスイッチを入れた

ぐるぐるぐるぐる鍋をかき混ぜとったら

手を洗い終わったAがリビングに入ってきて

入口近くに鞄置いてマフラーと袖たたみしたコートをきちんと重ねてその上に置く

「コートしわんなるやろ

ちゃんと吊っとき」

そう言うたら右の人差し指でおでこをかきながら小首を傾げる

困った時のAの癖

それに気が付かんふりして

「今手ぇ離されへんし自分でクローゼットからハンガー取ってきてくれるか」

ってなんて事あらへんように言う

「あっ･･･えっ･･･うん･･･」

困ったようなAの声が聞こえたけど

こわてAの方なんて見られへんとひたすら鍋ん中身を凝視しとったら

「･･･それじゃあクローゼット入らせてもらうね」

ってAが小さな声で言う

リビングのドアが閉まる音が聞こえて俺はやっと大きく息を吐いた