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Aちゃんの病状は対応が早かったおかげか
入院してゆっくりできたおかげか
日毎マシになって行って
今も耳鳴りや違和感は残るけど
全く聞こえん訳では無くなった
でも
あの全く聞こえんかった恐怖が
Aちゃんの心に深く濃く居座ってもて
目が覚めたらまた聞こえへんようになってたらどうしよう
そう思うみたいで
眠る事を嫌がるようになった
先生はどんな病気にも睡眠をきちんととるんは何より大事な事やって
睡眠を助ける薬も出してくれるんやけど
それも飲むんを嫌がって
限界がきたら寝て
何かから逃れるように飛び起きて
左耳が聞こえることを
確認して涙する
そんな事を繰り返していた
俺が面会に行ける日は
背中をさすりながら
繰り返し耳元で歌を歌って
気持ち落ち着かせるんやけど
仕事で行かれへん時はどうしてんのやろ
智衣ちゃんや琴音ちゃんも時間があいたら顔出してくれとるみたいやけど
誰もおらへん時は一人で恐怖とたたかってるんかな
今日で入院から十日って日に
面会終了の15分前に病室に滑り込む
白ご飯苦手なAちゃんのために
途中で買うてきた焼きたてパン
ほんまはあかんのやけど
二人で内緒で食べる
Aちゃんは
「内緒やで」って言うた俺に
ふんわり笑ろてくれたけど
自分の声も聞き取りにくいでか
小さな声で「ありがとう」って言うてくれただけやった
二人でおっても会話が弾むわけやないんやけど
Aちゃんのベッドに俺も腰掛けて
二人寄り添ってAちゃんの手を握りしめて
Aちゃんがリクエストした歌を歌って面会時間を過ごす
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作者名：UTA
| 作成日時：2020年3月4日 19時
