十年日記 (ページ8)

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暫く必死でこらえようとする彼女の嗚咽が部屋に響いた

「あなたの名前は出さないけど･･･」

「何度も何度も･･･」

「大切な人が出来たから別れて欲しいって言われたのに」

「･･･忠義を手放す事が出来なかった」

「私の前で辛そうにしている忠義を」

「どうしてもあなたに取られる事が我慢できなかった」

「･･･ごめんなさい」

「あの日も必死になって話を聞いてって言う忠義に」

「馬鹿じゃないの」

「常識的に考えてありえないでしょ」

「って言ったのが最後の会話になっちゃった」

「忠義が轢き逃げにあったって連絡がきて病院に駆けつけた時」

「忠義はずっとうわ言で私でなくあなたの名前を呼んでいたの」

「その時･･･」

「私はなんてひどいことをしてきたんだろうって」

「慌ててあなたに連絡を取ろうとしたんだけど」

「忠義のスマホのロックが解除出来なくて･･･」

「ごめんなさい･･･」

「･･･忠義は私が喪主として送られせてもらいました」

ポロポロ涙を流しながら謝罪を口にする彼女

僕の目からもテレビニュースでたつの死を知った時から

一度も流れた事の無かった涙が次から次へと溢れ出てきて

喉が締め付けられたように苦しくて何も言えず

ただ首を横に振るしかできひんかった