誕生日プレゼント2 (橙) (ページ17)

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彼女の夜 7 ページ17

部屋を出てドアに凭れるように立って深呼吸を繰り返す。

「俺の事知らん？」「テレビ出てる」って。知ってる。
彼はアイドルで、わざわざチャンネルを合わせたりCDを買ったりはしないけど、それでもテレビで見かけたら手を止めて歌に聞き入ってしまうくらいには好きだ。

そんなアイドルである彼をダブルの部屋へと招き入れてしまったのは･･･

心はざわざわとしたままだけど、こんな風に廊下に立ち尽くしているのも変だからもう一度大きく深呼吸してバーへと向かう。

バーに入るとバーテンダーが柔らかい笑みを浮かべて会釈してくれた。私はカウンターに近づいてから頭を下げる。

私の謝罪を聞いたバーテンダーは「お気になさらないでください」と静かな口調で言ってくれた後、「よろしければ外を見ていかれませんか？」そう言いながらいつものカクテルを作り始めた。
私は今の時間をどう過ごそうかと実は内心困っていたので申し出をありがたく受け入れる事にした。

出来上がったカクテルがカウンターに置かれて、私がお金を取り出そうとバッグに手をかけるより先にバーテンダーから「こちらは店からのプレゼントです。」と、言われてしまった。

「ご迷惑をお掛けした上にご馳走になるなんて･･･」私がそう言うと、バーテンダーはそれには答えずに「こちらもどうぞ」とあの人の分のカクテルも差し出してくれた。

私は「ありがとうございます。」としか言えずに二つのグラスを受け取りもう一度謝罪を口にしてからいつもの場所へと向かう。