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それからは小さなヤキモチや、小さなケンカを繰り返しながらいくつかの季節を重ねて、あの人が就職して、私も就職内定を手にした私の誕生日、初めてこのホテルに連れてきてもらった。

オシャレなバーで緊張しながら頼んだそれぞれのカクテルを手にこの片隅の場所に立って窓の外を見る。

今まで過ごした事の無い空間と時間にワクワクドキドキしていたのに、あの人は高所恐怖症のくせに何かを思いつめたように黙ってその綺麗な世界を見下ろしているから、私は何を言われるんだろうかと不安になって黙ってしまう。
そうやって二人して暫く黙ったままいたら、
突然、「大学卒業してからでいいから結婚してください。」あの人が私の方を向くこともないまま小さな声が届いた。

私はその声に弾かれたようにあの人の方を見たけれど、あの人はやっぱり窓の外を見たままで、けれど持っていたグラスの中身が震える程に手には力が入っていた。

「よろしくお願いします。」って私の返事を聞くや否や、グラスをテーブルに置いて私の手首を掴むとあの人は今にも泣きそうな、すごく嬉しそうな顔で笑って・・・


♪プルプル♪


ビクッと肩が上がる。思い出の世界で息していた私を一気に現実に引き戻す電話の音。慌ててグラスをテーブルに置いてバッグからスマホを取り出した。

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作者名:UTA | 作成日時:2019年11月26日 14時

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