Malachite (ページ2)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:7,251 hit

. ページ2

.

「今度のA社への納品の時、渡辺と目黒でうちの新製品売り込んでこい」

目黒が入社してきた時に俺が教育係をしたせいか、いつの間にかこいつと俺はバディのような印象を持たれてしまったらしい。

まあ、目黒は仕事もできるし、先輩の俺からしても頼りになるから良いけど。

mm「先輩、A社ってどんな会社っすか？」

nb「4年前からうちを贔屓にしてくれてる。担当の方も優しいし、まあそんな緊張しなくて大丈夫。

今日中にアポの連絡入れとけ」

次の新製品は、どうやらうちの会社でも挑戦的なものらしくて。自信作であるとはいえ売上には不安が残るらしい。

普段から割と贔屓にしてくれている会社に買ってもらえれば、大きな一歩にはなるだろうな。

nb「A社か...ま、何とかなるだろ」

いつものように外回りを終わらせ、今日はそのまま帰路に着く。

コンビニで晩御飯代わりのおにぎりを買って、ついでに酒も。

そんなんじゃ倒れちゃいますよ、なんて言われてるけど、自炊できないんだから仕方ない。

家に着いてジャケットも脱ぎ捨ててすぐ目に入るのは、高校2年の夏休み前、体育祭で撮った写真。

お前との、最後の写真。

元々進んで写真を撮る方じゃなかったけど、この時は母親に並ばされて、不貞腐れながら撮って貰ったっけな。

ったく、もっと笑えよ、俺。

自虐的な気持ちになってなんだか悲しくなっていたところに、メールの受信を告げる軽快な音が聞こえた。

『A社とのアポ、明後日の16時から取れました。』

明後日か。

明後日は仕事早く終わらせて美容の為に美容院とかクリニックとか回るつもりだったのに。

16時からじゃ定時には帰れそうもない。

ほんと、とことんついてねえ。

一人でイラついたって捌け口はない。

若干の虚しさを抱えつつ、少し乱暴にビールのプルタブを開けた。