苦労の記録105 ページ5
【志賀VS太宰。ファイッ!】
□
「失礼します」
大きな高価な扉を重々しく開ける。
前に一度だけ入った時も思ったが、この人の幹部室は他と違って豪勢な調度品はなく、随分と質素だ。カーテンから日光が眩しく部屋を照らしていた。
「お呼び出しにより参りました、何用で、」
「あのさァ」
言い切る前に遮られた。
なるほど、Aがよく話す現象はこれか(自分の台詞ぶっちぎり現象の事)
太宰幹部は机に片肘をつきながら、つまらなそうに羽ペンをくるくると弄んでいる。
「私……高橋君を囮に命じたと思うんだけど」
「……」
やっぱりそれか、と内心溜息をつきたくなった。
絶対この人はそれについて言及するだろうと思った。だから嫌だったのだ、この面会。
そう、俺はあの時、Aに作戦を説明していた時、ひとつ嘘をついたのだ。
“───囮?…どっちが?”
“──…僕、です”
指示には、Aが囮だと書いてあったにも関わらず、俺自ら囮になった。
咄嗟の判断だったのだ。
しかし、囮をやればAの危険が高まると思って、だから…なんて正直に言えば、俺の首が危うい。
俺は予め考えてあった台詞を並べる。
「あの状況では奇襲に応じられる能力が高い異能を持つ僕の方が囮は適役であると判断しました。
独断で行動をした事、この場を持ってお詫び致しします」
スっと、頭を下げ、精一杯の謝罪をした。目を開けたまま、じっと地面を見詰める。
太宰幹部は何も言ってこない。
ただ時が過ぎ、沈黙が流れる。窓が開いているのか、さわさわと昼下がりの風が頬を撫でた。
「別に、」
太宰幹部が沈黙を割くと同時に、俺はゆっくりと顔を上げた。
「別に、独断の行動を謝罪して欲しい訳じゃあないんだ」
ただ一言、太宰幹部はそう呟いたが、俺にはよく意味が分からなかった。
それが顔に出ていたらしい、太宰幹部はちらりと俺を一瞥した。
「私はね、志賀君。
“高橋君に囮をやらせなかった”事を謝罪して欲しい」
一瞬、自分の耳を疑った。
何を言っているんだ此奴は、と直感的に思った。
しかし、つまり、こういうことか?
「Aに、囮をやらせたかったと?」
「そうだよ」
「…それは、事務的にですか。それとも……私情ですか?」
「そうだよ
……って言ったら、どうするの?」
太宰幹部はくるりと椅子を回転させ、俺と真正面から向き合った。。
憎たらしい笑みを浮かべる彼は、まるで悪戯をする子供のようだった。
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メガネ第2号(プロフ) - かえる。さん» 返信激遅でごめんなさい、更新しました!コメント励みになります、遅筆ですがぜひ最後までお付き合い下さい。 (2022年8月28日 6時) (レス) id: 652442107f (このIDを非表示/違反報告)
かえる。(プロフ) - やったー!更新してる!(≧▽≦) (2022年5月24日 21時) (レス) @page46 id: 06d9623eb5 (このIDを非表示/違反報告)
メガネ第2号(プロフ) - 望務さん» ひい!!嬉しいです。文章少し長くなったりしてうざったいかもしれませんが頑張って書きます!ありがとうございます! (2022年5月24日 20時) (レス) id: 5b50776276 (このIDを非表示/違反報告)
メガネ第2号(プロフ) - 紺さん» 前々から読んでいてくれていたんですね!出戻り嬉しいです、本当にありがとうございます!コメント励みになります、頑張りますね! (2022年5月24日 20時) (レス) id: 5b50776276 (このIDを非表示/違反報告)
メガネ第2号(プロフ) - 小夜子さん» 返信遅くなってごめんなさい!コメントありがとうございます、他の作品も読んでくれているようで凄く嬉しいです!文スト4期公開楽しみに頑張ります! (2022年5月24日 20時) (レス) @page46 id: 5b50776276 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2018年7月3日 4時