苦労の記録44 ページ44
眉目秀麗な少年だった。髪色は淡い水色で、瞳は紫色の夕闇のよう。ニコニコと愛想のいい笑みが良く似合う。
『(綺麗な人……。)』
見つめていると、その少年が溜息をつき出した。悪い感じのため息だな、と察した。
「足止めかと思ったら、こんな間抜けそうな少女ですか〜!」
『……は?』
かちり、と短気な私の怒りスイッチが入った。少女なのは分かるが、間抜けそうだって?と。賢い、聡いという賞賛しか受けてこなかった私にとって、それは初めての侮辱だった。太宰さんに関しては別だ。あの人からしたら他の人は全て等しく馬鹿なのだから。
「あんた誰です?迷子?」
『人に名前聞く時は自分からでしょ。』
「志賀優哉。で?」
『……言わない。』
あんまりに舐めた態度を取られたので、少し意地悪を返した。彼は目を丸くする。
「ふぅん……まぁ最近は、新人が入ったと聞きましたが。」
もう情報が伝わってるのか、と少し驚いたが、別にその程度の情報漏洩で支障はない。
『それが?』
毅然とした態度で突っぱねると、彼は探るように目を細めた。
「……あんたですか?異能力持ちの幹部部下って。」
『、』
目の前の彼は、私の小さな動揺を見逃さなかった。
───ヒュッ
『!!』
私の足元に何かが飛んでくる。反射で避け、地面に刺さったものを確認する。氷だった
飛んできた方向─志賀─を見ると、彼の周りには氷が幾つも浮いている。
先程までの愛想のいい少年はどこかへ行き、そこには捕食者の目をした暗殺者がいた。
──「じゃあ殺しておきますね!」
鋭い殺気が私の肌をピリピリと刺す。退いてしまいそうになる足をグッと抑え、無理やり口角を上げた。
『あんたじゃ殺せないと思うけど?』
「……」
挑発した途端、氷が地面からパキ、と盛り上がり私を取り囲む檻を成す。
『(動き封じようってこと)』
意図を察した私は真っ先に足を上げ、振り下ろす。
ガシャァアン
ナイフと蹴りを使って氷の檻をぶっ壊す。中也さん直伝のナイフ術と足技だ。
しかし砕けた氷が私の視界いっぱい埋めつくしてしまう。前が見えない。
『(くそ、視界が……、!)』
その場から飛び退こうとした時に、背後から何かが飛んできた。
──ドッ
大きな冷たい氷の塊が、鈍器のような硬さと共に背中に当たる。
『、い゛……っ!』
檻は、ミスディレクションだ。最初から私が檻を壊すと分かってて氷の置き弾をしていたのか。こいつ、戦闘慣れしてやがる。
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ブラコン - かっかッこいいっ兄に思わず抱きつきましたぁ〜。ぶたれたし、抱きつきたくなかったよ〜!けどけど、イラストがッ! (2018年7月21日 22時) (レス) id: e9f72c513a (このIDを非表示/違反報告)
杏 - めっちゃおもしろいですね! 殺せば、勝ちなんだのところ吹きましたwww 渚君www (2018年7月4日 0時) (レス) id: 636a061378 (このIDを非表示/違反報告)
いんこ - 37ページの下らへんに中也のとこで「だうしな」になってます (2018年1月29日 16時) (レス) id: 4376bf785f (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - イラストかきました。どぞ→ http://uranai.nosv.org/uploader/common/7/6/8/768eaacc1415e24c7349773e07126187.jpg (2018年1月27日 19時) (レス) id: 3baa51b5a2 (このIDを非表示/違反報告)
自殺嗜好(プロフ) - めっさお気に入りです!夢主ちゃんのリアルな突っ込みが気に入ってます!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 11時) (レス) id: f37f9cdf35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2017年12月31日 19時