検索窓
今日:33 hit、昨日:111 hit、合計:833,476 hit

苦労の記録44 ページ44

眉目秀麗な少年だった。髪色は淡い水色で、瞳は紫色の夕闇のよう。ニコニコと愛想のいい笑みが良く似合う。


『(綺麗な人……。)』


見つめていると、その少年が溜息をつき出した。悪い感じのため息だな、と察した。


「足止めかと思ったら、こんな間抜けそうな少女ですか〜!」
『……は?』

かちり、と短気な私の怒りスイッチが入った。少女なのは分かるが、間抜けそうだって?と。賢い、聡いという賞賛しか受けてこなかった私にとって、それは初めての侮辱だった。太宰さんに関しては別だ。あの人からしたら他の人は全て等しく馬鹿なのだから。


「あんた誰です?迷子?」

『人に名前聞く時は自分からでしょ。』

「志賀優哉。で?」

『……言わない。』


あんまりに舐めた態度を取られたので、少し意地悪を返した。彼は目を丸くする。


「ふぅん……まぁ最近は、新人が入ったと聞きましたが。」


もう情報が伝わってるのか、と少し驚いたが、別にその程度の情報漏洩で支障はない。

『それが?』

毅然とした態度で突っぱねると、彼は探るように目を細めた。

「……あんたですか?異能力持ちの幹部部下って。」
『、』


目の前の彼は、私の小さな動揺を見逃さなかった。


───ヒュッ

『!!』

私の足元に何かが飛んでくる。反射で避け、地面に刺さったものを確認する。氷だった


飛んできた方向─志賀─を見ると、彼の周りには氷が幾つも浮いている。

先程までの愛想のいい少年はどこかへ行き、そこには捕食者の目をした暗殺者がいた。


──「じゃあ殺しておきますね!」

鋭い殺気が私の肌をピリピリと刺す。退いてしまいそうになる足をグッと抑え、無理やり口角を上げた。


『あんたじゃ殺せないと思うけど?』
「……」


挑発した途端、氷が地面からパキ、と盛り上がり私を取り囲む檻を成す。

『(動き封じようってこと)』


意図を察した私は真っ先に足を上げ、振り下ろす。


ガシャァアン


ナイフと蹴りを使って氷の檻をぶっ壊す。中也さん直伝のナイフ術と足技だ。

しかし砕けた氷が私の視界いっぱい埋めつくしてしまう。前が見えない。


『(くそ、視界が……、!)』


その場から飛び退こうとした時に、背後から何かが飛んできた。


──ドッ

大きな冷たい氷の塊が、鈍器のような硬さと共に背中に当たる。


『、い゛……っ!』


檻は、ミスディレクションだ。最初から私が檻を壊すと分かってて氷の置き弾をしていたのか。こいつ、戦闘慣れしてやがる。

苦労の記録45→←苦労の記録43



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (731 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1174人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ブラコン - かっかッこいいっ兄に思わず抱きつきましたぁ〜。ぶたれたし、抱きつきたくなかったよ〜!けどけど、イラストがッ! (2018年7月21日 22時) (レス) id: e9f72c513a (このIDを非表示/違反報告)
- めっちゃおもしろいですね! 殺せば、勝ちなんだのところ吹きましたwww 渚君www (2018年7月4日 0時) (レス) id: 636a061378 (このIDを非表示/違反報告)
いんこ - 37ページの下らへんに中也のとこで「だうしな」になってます (2018年1月29日 16時) (レス) id: 4376bf785f (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - イラストかきました。どぞ→ http://uranai.nosv.org/uploader/common/7/6/8/768eaacc1415e24c7349773e07126187.jpg (2018年1月27日 19時) (レス) id: 3baa51b5a2 (このIDを非表示/違反報告)
自殺嗜好(プロフ) - めっさお気に入りです!夢主ちゃんのリアルな突っ込みが気に入ってます!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 11時) (レス) id: f37f9cdf35 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2017年12月31日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。