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「…いい景色だね、エンドラー」
リズが優しくそう言うと、傍らに控えている黒龍は肯定するように言葉のない声を発する。
「まさか貴方が私の気配を錯乱してくれる能力を持ってたなんて……」
キャップを被っていないせいか、髪がいつもより多く靡いている。風によって後ろに持っていかれた髪を抑えて、彼女は振り返った。
「──これでしばらく、一人になれる」
そう言ったリズの瞳は、ピンク色と呼ぶには黒く濁り過ぎているような気がした。エンドラーの頭を撫でながら微笑んではいるが、きっと心の内は虚無に包まれているに違いない。
「………今は、見つかるわけにはいかないの。もし出会ってしまったら──」
何を言ってしまうか分からないから……。
リズのその言葉を皮切りに、彼女を探し回る四人の男たちの様子を覗いてみよう。
「リズーーー!! どこにおるんやーーーーッ!!」
空を飛びながら大声でそう叫ぶが、返事がかえってくる様子はない。またダメか、と拳をグッと握りしめる。しかしまだ諦めないで探し回るシャオロン。
「リズーーーーー!!!!」
.
「………」
名前を呼ぶ声が彼女のいる場所にも響いた。実はシャオロンのいる位置、つまり北の方角が、リズのいる位置に一番近かったのだ。
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作者名:真夜 | 作成日時:2023年7月15日 10時