悲壮な事故 ページ19
「……ふむ。複雑骨折だね」
「えっ…!?」
「やはりそうだったか…」
悪魔学校の保健教師担当のアルコン・シンペイが、リズの足首を触りながらそう言った。同伴しているブルシェンコ先生も骨折の路線を追っていたらしく、驚くことなく納得している。
一方、骨折を告げられたリズは、信じられないというような顔をしてシンペイを見ている。
「
「そんなっ…(このままじゃ、みんなとの約束破っちゃう……！)」
リズはここに来る前にみんなと約束したことを思い出す。
．
「結構ええ調子やな！」
リズからボールを受け取ったシャオロンが得意げな顔でそう言った。ウツが練習に来なくなってから数日、残りのメンバーは処刑玉砲の本番に向けて特訓に励んでいた。
「このままいったら昇級ワンチャンあるかもな」
「あとはゾムの爆弾投げるくせがなくなればやな…」
トントンが遠い目をして少し離れた場所で爆弾ジャグリングをしているゾムにジト目を向ける。
「リズのキャッチ能力は恐るべしやな。敵に回したないわ」
「私としてもシャオロンが敵なのはちょっとご勘弁願いたい…」
互いが互いを強敵と見なしており、敵に回すのは厄介だと考えているようだ。
「けどまぁ、それはそれとして……」
シャオロンはボールを脇に抱えると、この場にいる全員を見渡してニッと口角を上げた。
「みんなで処刑玉砲頑張ろな！」
まさかシャオロンからそんな言葉が出るとは……。トントンとリズも、爆弾で遊んでいたゾムも、シャオロンを見つめてポカンとした表情を浮かべた。しかし次の瞬間にはみんな笑っていて、シャオロンの言葉に答える。
「……おう！ せやな！ たまにはいいこと言うやないかシャオロン！」
「ま、一番目立ったるのは俺やけどな!!」
そう言ってトントンに目掛けて豪速球を投げた。
「そんなこったろうと思ったわクソ!!」
ヤケクソに怒りながら、トントンはシャオロンの投球を受け止め…るのはさすがに怖いので避けた。
そこからもみんなで笑いながらの日々を過ごし、着々と本番に向けて練習を積み重ねている時だった。
突如として悲劇が訪れたのは。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真夜 | 作成日時：2023年7月15日 10時
