手品２１ ページ22
「助かったよ。ありがとうな、奇田」
「お役に立てたならば光栄です。それでは、失礼します」
今年度初の委員会集会がようやく終わった。
頻繁には活動しないとはいえ、面倒だな……。引き受けたからにはやるしかないんだけど。
そういえば自己紹介の時１年の女の子ですごい緊張してた子いたなぁ。愛らしかったけど肝心の名前とかよく聞き取れなかったな。残念。
取り留めのないことを考えながら体育館を目指していると、前方にジャージ姿の女性。
まるで黒絹のように艶やかで美しい髪を揺らし、凛と背筋を伸ばして歩くその姿は間違えようもなかった。
「清水さん、お疲れ様です」
「奇田。おつかれ」
「本日もご機嫌麗しいようで何よりです」
「……」
にこりと笑んで告げた挨拶はいつものようにすげなく無視される。
男に媚びない態度は彼女の美点の一つだ。今日もお美しい。
そんな清水さんは段ボールを抱えて歩いていたようだった。それほど大きくないとはいえ、これはいけない。
「荷物お持ちしますよ」
「大丈夫」
断られることは想定済みなので、進行方向の先に回ってヒョイと段ボールを奪う。
重い訳ではないが、軽いとも言えない重さだ。やはり俺が持つべきだろう。
「男の俺に花を持たせて下さい。ね?」
驚いて目を見開く清水さんへ悪戯っ子のように笑ってみせる。ついでにウィンク。
清水さんは気取った物言いはお気に召さないらしくいつもほんの少しだけ不機嫌そうな顔をされるが、こういった素の厚意には弱いことを俺は知っている。
「……ありがとう」
「Ladyのお役に立てるなら喜んで」
「……」
許して下さい、条件反射なんです。
嫌そうなお顔もそれはそれで美しいのだが、疎ましがられるのは本意ではない。
なるべく素の話し方でいたいが、いかんせん女性対応が身に染みすぎていて考えるよりも早く口からするりと零れるのだ。ある意味コミュ障である。
「ここまででいい。ありがとう」
「そうですか? どうせなら中まで運びますよ?」
「大丈夫。奇田の練習時間が減るでしょ」
「……すみません、お気遣いありがとうございます」
真っ直ぐな眼差しに根負けし、荷物を手渡した。
最後に体育館の扉を開けて「どうぞ」と微笑むと、彼女は変わらず澄ました表情で中へ入っていく。しかし、その頬がほんのり染まっているのを見逃さない。
美しく、可愛らしいお人だ。
この後田中達にダル絡みされたのは言うまでもないだろう。
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
