手品14 ページ15
「あ、奇田」
「え? おぐっ!」
「ちわっス、スガさん。大丈夫かー、チビ」
すぐに気付いてくれたスガさんへ挨拶をすると「おース」と笑顔で手を振ってくれた。こちらを振り向いたことで頭にボールが当たったチビは、声を掛けると慌てて「ちわす!」と元気に挨拶をしてくれる。
それに声を返しつつてんてんと近くまで弾んできたボールを拾い、チビへ渡してやる。
「昼休みも自主練か?」
「はい! レシーブ出来るようにならないとトスが上がらないので……」
「スガさんは上げてやらないんスか?」
「今上げてもらったらなんか負けた気がするんだってさ」
「ハハハ! 徹底抗戦か! じゃあ俺も上げる訳にはいかないな」
「キダさ……じゃなくて、クシダさんもセッターなんですか?」
その問いに首肯すると、俺を見上げている瞳の輝きが増す。
ついさっき似たような表情を見た気がして、思い出した。
バレーのこと話す影山と同じ顔しやがる。
バレーボールが好きで好きで楽しくて堪らないという気持ちが溢れている顔。何も邪気がない純粋で無垢な子どものような
ケンカばっかで噛み合わない二人かと思えば、案外似た者同士なのかもな。
そんなことを思った俺は、知らず笑んでいたようだった。幼子を見守るのと似たような微笑ましさを感じて、首を傾げたチビの頭をポンポンと軽く撫でる。
「練習、頑張りな」
「暇なら奇田も見てったらどうだ?」
「え、けど俺、指導なんかできませんよ」
「そんなことないだろ。お前も一年で上達したし、学んだことを教えてやればいいだけだよ。それに、奇田と日向は一番レベルが近いと思うから、小さな改善点とか気付けるんじゃないか?」
確かに、初心者には初心者にしか分からない悩みや引っ掛かりがあると思う。
入部当初、俺がつまずきを先輩に相談した時「あー、そうか! だから上手くいかないのか!」と先輩も初めてそれに気が付く、というようなことが稀にあった。
経験者からすると本当に当たり前の基礎中の基礎で、小さなことで、気付くのが難しいのだろう。
けど、俺はチビ……日向と違って完全に根っからのド素人だった訳で。
俺よりもバレー歴の長いだろうコイツに教えることなんて……。
そう思いながら日向に目を落とすと、明らかに期待の眼差しが向けられていた。
それを小型犬のようだと思ってしまえば、最早断る余地などあるはずもなかった。
「……じゃあ、ちょっとだけ」
「! しゃス!!」
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです!これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます!頑張ってください!! (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:音々 | 作成日時:2016年8月14日 20時