手品１３ ページ14
「ここの自販機初めて使うなー。何にしよ」
着いたのは校舎北棟の裏側にある自販機で、すぐ近くに第二体育館があった。普段この辺りに来る人は少なく、周りには誰もいないようだ。
う〜ん……りんごかな。
暫く悩んだ末に俺は紙パックのりんごジュースを選び、吐き出されたお釣りを適当に入れ直して影山へ場所を譲る。
「あざス」と律儀に頭を下げて自販機の前に出た影山は、迷う素振りもなく目当てのボタンを押した(謎の二本押し)。
再びちゃりちゃりと吐き出されたお釣りを取り出し財布へしまっていると、奥の方からスガさんらしき声が聞こえてきた。
影山も気が付いたようで自販機の陰に隠れて様子を窺っている。盗み聞きは感心しない行いだが、何やら話をしているようなので空気を読んで俺も陰から密かに覗く。
あのチビもいるな。二人で自主練か?
あっ、そういやチビの名前まだ知らねえや。丁度いい時に聞こう。
「影山を倒せるくらい、強くなりたいんです」
チビのその言葉が聞こえた瞬間、影山がぴくりと反応した。
また激昂して飛び出すかと思ったが、意外にも彼は静かに続く言葉を聞いていた。
「そうすれば、もっと色んな強い相手とも互角に戦えるし、試合で簡単に負けたりしない」
今朝の田中の話からすると、影山との試合はチビの最初で最後の試合だったのかもしれない。
初めての相手が強豪校とあっては、それは良くも悪くも鮮烈に記憶に残るだろう。
「おれ、もう負けたくないです」
「…………」
「ふうん……」
よっぽどこたえたんだろうな、負けたのが。
それでも性根腐ってないとか向上心の塊か?
黙りこくったままの影山をちらりと見てみると、一文字に口を引き結び何かに思いを馳せているようだった。
影山も決勝戦で敗退している。思うところがあるのだろう。
そのまま
その間にも二人の話は進み、再び耳をそばだてて聞こえたのは優しく諭すようなスガさんの声だった。
「“最強の敵”だったならさ、今度は“最強の味方”じゃん」
「…………ん"ぅ〜〜〜」
流石スガさんいいこと言った、と思ったらチビは納得しないのか唸り声を上げる。決して認めたくないというその様子に、くつくつと
やがて二人が練習を再開したタイミングを見計らい、俺はヒョイと顔を出した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
