検索窓
今日:4 hit、昨日:11 hit、合計:45,340 hit

嘘30 ページ31

.







「桐谷さん、最近明るい絵が多くなってきたわね」





美術室で絵を描いていると、部長が話しかけてきた。
不二先輩と付き合い始めてから2ヶ月が経った今、夏休みだが部活のために毎日学校へ来ていた。





「そうですか?」





顔を上げて部長と目を合わせた。
穏やかな表情の彼女は、正に日本美人といった感じだ。





「ええ。以前はもう少し寂しい感じの絵だったわ。上手いのは変わらないんだけど、どことなく暗かった」





私は静かに頷いた。
部長の言う通り、私はずっと暗い絵ばかり描いていた。








お花を抱き締めて泣く少女



夕日を眺めている少年の後ろ姿



枯れたお花



葉が散って裸になった大木









どれも、私の心情を表そうとして描いた絵だった。
どの絵も、私の分身だった。






司を思って描いた絵は美しいと思えたが、やはり寂しさが残ってしまう。



彼との時間をもう一度―



そう思って描いた絵も、どこか色褪せて見えるのだった。









「この人は不二君?」





部長がキャンバスを指差して聞いてきた。
そこには、満開のハナミズキの下で上を見上げて微笑む少年の姿が描かれていた。





「正解。よく分かりましたね」





一見、主役はハナミズキの様に思われるけど、木の下に小さく立っている少年の横姿こそが、本当の主役だった。






「素敵ね」






部長はそれだけ言うと、しばらく絵を眺めていた。
周りには他の部員がいて何かしら喋っているはずなのに、何の音も聞こえてこない。







― 静かだな







そっと、目を閉じた。
瞼の奥に、不二先輩の笑顔が見えた気がした。







.

嘘31→←嘘29



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
69人がお気に入り
設定タグ:テニプリ , 青学 , 不二周助
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

エル(プロフ) - Jokerさん» ありがとうございます!そう言ってもらえるととても嬉しいです( ´∀`)更新頑張ります! (2016年12月6日 22時) (レス) id: 4de2819dbd (このIDを非表示/違反報告)
Joker(プロフ) - 面白いです、頑張ってください! (2016年12月6日 17時) (レス) id: c017e395ea (このIDを非表示/違反報告)
エル(プロフ) - soraさん» ありがとうございます!頑張ります(*≧∀≦*) (2016年11月22日 12時) (レス) id: 4de2819dbd (このIDを非表示/違反報告)
sora - 続きが気になります!頑張ってください! (2016年11月19日 10時) (レス) id: 7628f733c9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:エル | 作成日時:2016年11月17日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。