マジックアワー3【THE FIRST】

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『日高さんは音楽を通して私を見てくれてるから、そんな課題は出さないんじゃないかなとも思ってる』




昨日、舜斗に言った私の考えが外れていたら。
やっぱり日高さんが私に求めることが、“笑顔の克服”なら、正直私はこの審査を乗り越えられる自信がない。


しかし、硬直した私の体を解かすように、日高さんは首を横に振った。




「ミヅキの課題は、女子の力を僕に見せつけること」




それは、2次審査ぶりに日高さんが口にした、私の立場を再認識させる言葉。




「正直まだ迷ってるんだ。BMSGから出る最初のグループに、女子を入れるべきかどうか。
ミヅキには僕の中にある迷いを払拭させるくらいのパフォーマンスを期待している。

ここから先の残りの審査で、今残っているメンバーへの共通課題は、グループに対する“存在価値の証明”なのね。その中でも、女子であるミヅキとニコは、特別に重いものだと思ってほしい」




日高さんの言葉は私にとって、たまに抽象的で伝わりづらい時がある。そんなとき、知ったふりをして受け流すべきか、具体的な内容を求めるべきか、その見極めが大事だ。

今回は明らかに、後者だと思う。




「……具体的に何をすれば……？」

「ははっ」




また、伺うように日高さんを見た私に、彼は笑い声をあげながら居住まいを正した。




「脅すような事を言ったけど、既にミヅキは人の目を惹きつける能力だったり、音楽を通した感情表現、伝える力っていうのは十分持っている。ただ、それでも何か足りないと感じてしまう原因は…もう察しがついてるかも知れないけど」

「…………」




“何か足りない”の直接的な原因になるかは分からないけど、私のダンスはまだまだ、経験豊富なメンバーに比べて地に足がついていない感じがする…。日高さんが認めてくれた“才能”を全力で出せる力が備わっていないような気がするのだ。

どうだろう、日高さんはその事を言っているのだろうか。


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