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「なにしてるの?」
夜練を終えて風呂から上がった23時過ぎ。廊下の手洗い場で、腕まくりをして桶の中に手を突っ込むルイを見かけた。
「シューズ洗ってます」
「……練習靴?予備持ってきてるの?」
「いや、これだけっす」
桶から引き上げたスニーカーから ジャバジャバジャバ…と勢いよく水が滴った。私の視線はチラッと窓の外に映る。季節は本格的な春に差し掛かると言えど、今夜も窓の縁に結露ができるほど冷え込んでいる。
(乾くのかな……)
今から乾かしたとして、どんなに粘っても8時間…いや、レオくんやソウタくんが明日も朝練しようと言ってたけど、この感じだとまともに参加する気もないのかも知れない。
「足のサイズ何センチ?」
「26センチ」
「おっ、おっきいねぇ」
「そうですか?」
私の気も知らないで嬉しそうなルイ。私の予備のシューズを貸せたら、と思ったが、26センチの足に24センチの靴は小さすぎる。
何か良い手はないかと考えてみるが、…思い浮かばない。
今から参加者に声かけていけば誰か1人くらい靴を貸してくれたりするだろうか。でもなぁ、もう遅い時間だし、私がそこまでするのも違う気がする。
まあ、自力で頑張ってもらうか。
「……………乾かないんじゃない?それ」
「そうっすかね。リュウヘイに聞いたら“良いんじゃない”って言われたんですけど」
「もう一足あると思ったんじゃないのかな。ドライヤーで乾かしてみようよ」
「そうします。ミヅキちゃんも来てください」
「あっ、う、うん。……わかった」
私は部屋に戻ろうと思っていたんだけど。
ルイが水が滴ったままスニーカーを手洗い場からあげたもんだから、廊下が水浸しになる。慌てて持っていたタオルをスニーカーに当てたら「うおっ、ありがとうございます」って、ルイは考えが足らないのか、それとも確信犯なのか?
結局そのまま彼の後ろから手を伸ばすようにしてタオルでスニーカーを包んだまま、着いて行くままに彼の部屋までやってきた。
ルイが足で扉を開けて部屋に入ると、中にはテレビを見ているリュウヘイがいて。
私がいると思わなかったのだろう、少し低い声で「もうそろ寝る?」と振り返った目が大きく見開かれた。
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rinngo(プロフ) - 読んでて茨木市が出てて、近所で驚きました。みんな口調似てるしいつも日高さんの言葉が深く刺さってきます!まじでこの小説だ好きです! (12月1日 12時) (レス) @page22 id: 589479bc12 (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 夢萌さん» こんにちは!いつもありがとうございます(^^) めちゃめちゃ嬉しい言葉!すっごい励みになります♡ 思いの外プライベートが忙しくなってしまって、マイペース更新ですが…ぜひこれからも楽しんでいっていただければと思います! (2022年3月30日 0時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
夢萌(プロフ) - 更新ありがとうございます!!お気に入りにNewの文字があるだけでいつもよりわくわくとした一日になるほどにこの小説に惚れています…笑もうファンといってもいいほどにこの小説が大好きです!作者様のペースでこれからも更新頑張って頂きたいです^っ ̫ <^ (2022年3月29日 18時) (レス) @page19 id: e4933e1f9f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - なあさん» なあさんこんにちは!楽しんでいただけて嬉しいです(^^) ちょっとずつマイペース更新になってしまっていますが汗 これからもよろしくお願いします! (2022年3月28日 22時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあ(プロフ) - 思わず笑ってしまう面白い場面がちょこちょこあって、楽しんで読んでおります!みんなとてもかわいいです、素敵なお話いつもありがとうございます! (2022年3月28日 17時) (レス) id: b86f0e9c1f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2022年3月21日 17時