マジックアワー2【THE FIRST】

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じっと、決して大きくない黒目がちの両眼が私を見ている。居心地が悪くなって少し体を横にずらしたりしてみても、それを追うように舜斗は私から視線を逸らすことはなくて。

先に根負けしたのは私の方だった。




「不安じゃないって言ったら、嘘になるよ。
グループでやってくってなってるのに、笑えない私がそん中にいて、どんなデメリットが生まれるかなんて、日高さんじゃなくてもわかる」

「……」

「でも、じゃあ。今ここでそれに悩んだら解決するのかな。日高さんがそれ知って、私が笑えるようにしてくれるのかな。

……違うと思う。日高さんは優しいけど、オーディション中にそんな、甘えさせてくれるような優しさは見せないと思う。

だけど逆にね、笑えないことが評価に関わるんだったら、きっと日高さんは直接言ってくれると思う。わざわざ舜斗を使って遠回しに察させるとか、そんなんじゃなくて」




もし次の審査で、日高さんが求める私の課題が 笑えるようになること なら。それならその時、私は私のやる事をする。

このオーディションで勝ち抜くと決めたからには、彼が求める自分になろうとは思う。でもなんとなく、私の知ってる日高さんは、そういう世俗的な課題をこのオーディションに持ち込まない気がした。




「……これは勘だけど。日高さんは音楽を通して私を見てくれてるから、そんな課題は出さないんじゃないかなとも思ってる。

だから、今は大丈夫。
そんなに困ってない。」




そうは言ったけど、ほとんど願望に近い考え。

自分が憧れる人に否定されるまで、何かをできない自分を否定したくなかった。それはただの強がりかもしれないけれど、そう自分に言い聞かせるしかない。

ただ実直に音楽と向き合って、自分ができる最高の形を日高さんに見せて、それでも彼が私に対してデビューメンバーとして“笑うこと”を望むのなら、その時に考えよう。

そもそも私が笑えないのは、オーディションとは関係ない。私自身の問題なのだから。

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