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「みづ、ちょっといい?」
山中湖ピクニックから帰ってきて、合宿所で行われた2度目のバーベキューの後、汚れた手を水道で洗っていたらそう舜斗に話しかけられた。振り返ったら彼は 周りに人がいないかしきりに気にしているようだった。
「ん?」
「……ここだとちょっと」
「あー、じゃあちょっと待って」
びしょ濡れになった手を振り、首にかけていたタオルで拭く。「練習室行く?」と聞いたら舜斗は頷いた。
「おい、うそだろ、2人ともまだなんかすんの?」
練習室に向かう道すがら、私達を見かけたマナトくんがうんざりしたような声でそう言ってきた。「まさか」と舜斗は咄嗟に笑って。
そんなやりとりの中で、私達の空気に何かを察したのだろう。ふっと視線を逸らして小さく頷くと「次の審査発表遅れんなよー」と、ロビーの方へ歩いていった。
そうだ、忘れていたわけじゃないが、この後すぐに合宿2次審査の内容が発表されるのだ。
「すぐ終わるよね?」
「終わる終わる」
やたら軽いノリだけど本当に大丈夫なんだよね…?
いつも夜遅くまで人気のある練習室は、今日に限っては静まり返っていて。電気をつけるのも思わず戸惑うような空気が流れている。
「……こっちにする?」
「そうしよ」
真っ暗な練習室ではなく、舜斗が指差したのは廊下に並べてあった椅子。私はそこに腰掛けて、舜斗も隣に座った。
「どうしたの?」
「……次の課題が始まる前に、言っといたほうがいいと思って」
「??」
椅子に浅く腰掛けて、背もたれに深く体重を乗せる舜斗は、何となく言い淀みながら重い口を動かしているようだ。
「…………」
「え、気になる。なに?」
舜斗の方に体を向けて、催促するように声をかけたら、彼はゆっくりと私を見て また視線を逸らす。
「この前、アー写撮影の後、日高さんに呼び出された」
「……それで?」
「Aのこと聞かれた」
思いもよらない言葉に、喉が詰まるような感覚がした。なんで舜斗に?…いや、問題はそこじゃない。
日高さんがわざわざ舜斗に、何を聞いたの?
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白(プロフ) - なあさん» こんにちは!たくさん読んでくださって嬉しいです(^^)今ちょうどブック3を準備中なので、今日の夜か明日には更新できるかと思いますので是非お待ちください♡なあさんもお身体お気を付けてください(๑˃̵ᴗ˂̵) (2022年3月21日 13時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
なあ(プロフ) - 何度も繰り返し読み返すほど、どのお話も好きです!これからのお話も楽しみにゆっくり待機します〜!最近、寒暖差が激しいのでお体に気をつけてくださいね! (2022年3月20日 23時) (レス) id: b86f0e9c1f (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - 雲さん» はじめまして、コメントありがとうございます(^^)夢主ちゃんショウタくん信者なので、つい出ちゃったんでしょうねー。笑 マナトくんほんとどんな空気にも合うので動かしやすく書きやすく、沢山出しちゃってます笑 これからもよろしくお願いします! (2022年3月17日 18時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
雲 - はじめまして、「ショウタくんを出せ」に爆笑して思わずコメントしました。マナティ推しですがめちゃくちゃ楽しく読ませていただいてます!シュント身内的な女の子にはこんなあしらいしてそうって想像出来るし、マナティ成分も高めで嬉しいです!続き楽しみにしてます! (2022年3月17日 16時) (レス) @page39 id: 2da972bf1d (このIDを非表示/違反報告)
白(プロフ) - アキさん» はじめまして!自家発電笑いました(^^)楽しんでいただけて何よりですっ!シュントくん推しの自己満足満載ですが、これからもどうぞよろしくお願いします! (2022年3月15日 0時) (レス) id: b25d4639e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白 | 作成日時:2022年3月4日 17時