マジックアワー2【THE FIRST】

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現役高校生も、今をときめく現役中学生3人組には敵わなかった。ゴール手前で「個体差あるよ！」と悔しがる舜斗に激しく同意した。努力値素早さに全振りした個体持ってきてください。




「「ああー、アイスー…」」

「あ、ちなみにアイスは嘘」

「「えっ？！」」

「2人ともやる気なさそうだったからつい」




つい吐く嘘にしては普通すぎた。嘘であることが信じられないレベルである。勝っても負けても結局もらえなかったと知って、2重に食らってしまった。あんなに頑張ったのに……まあ私、カメラ持ってただけだけど。




「なんだよそれー」

「ねー。悪い大人だー」




ほんとやんなっちゃう。と、舜斗と顔を見合わせてマナトくんを非難する。いつの間にか仲直りして息を合わせる私たちに、マナトくんは「まだ19だよ！」って、大人じゃないアピールが凄かった。





＊





富士山がよく見える坂道の途中。
私達はバスから降りて、一列に並んで目の前に聳える大きな山を見ていた。




「一言ずつ、もらおうかな」




日高さんがそんな風に言って、先陣を切ったショウタくんから順番にみんながそれぞれ自分の決意を口にする。

どんな事を言おうか、考えが頭を巡った。
今、私が自分自身に1番言いたいこと。

当たり前の日常を失って、笑うことも忘れるほどの孤独な中、1人っきりで音楽と向き合ってきた。
一度は諦めた夢を、それでも捨てきれずに、ここまで来た私は。




(止まった時間を動かすために、一歩踏み出した)




その先に見えた景色に今、何を決意するのか。
そう、気持ちの整理がついた時、私の順番は周ってきた。




「……正直自分がここにいる事がまだ、
　どこか信じられなくて、足元が覚束ない時もある。

でも、私は確かに選ばれて、
色んな人の思いを…何より誰にも負けないくらいの、
自分の思いを乗せてここに立ってる。

与えられたチャンスがあるのだから……、まだまだこれから沢山努力して、誰も見たことが無いような景色に向かって、自分を高めていきます」




視線がさらに一つ、上にあがる。

それは、祈りにも似た叫び。




「っ、私はもう二度と立ち止まらない。

── どこまでも高く、遠く！進み続けてやる！」




視界いっぱいに高く見える日本一の頂の
さらにその先へ。


そしていつの日か、




(私の歌声が天にまで届きますように…)




あの人の元へ、届きますように。



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