マジックアワー2【THE FIRST】

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「ミヅキ、どうぞ」




あっという間の3分間が過ぎて、日高さんの視線が私の方に移ってきた。
マイクを持つ手を上げて、小さく息を飲んだ後、口を開く。




「まず、メンバー全員で、この舞台に立てたことに本当に感謝したいです。今日まで本当に色々あり、私も本番前に怪我をしてメンバーに心配をかけましたが…
本当に、一緒に走りきってくれてありがとう……

YOLOは、ここにいる1人でも欠けてたら生まれなかった奇跡の歌で……チームとして最高のクリエイティビティを見せられたんじゃないかと満足しています。

この曲を生むことが出来てとても誇らしく、最高の形で届けられた今日という日が、
今後の私のアーティスト人生の糧になると思っています。

不安なことが沢山あった9日間だったけど、辿り着いた今の達成感は、きっと一生忘れられないです」




“ありがとうございました”
と頭を下げたら、会場から拍手が湧いた。




「…ミヅキは、初めてあった時からずっと言っているけれど。“歌”という面で、他に類を見ない才能を持っています。
今まではその力が強すぎる故に、

“チームとして見たときにどうなんだろう”
“浮いてしまわないか”

っていう不安もあったんだけど、今日それが、本当に杞憂だったと思い知らされたね。

君のその、変幻自在に色を変える歌声は、曲の中で、バラバラな個性をつなぐ大きな役割を果たしていました。

制作時からそういうところを極力意識していたと知っています。君が言った通り、チームの高いクリエイティブ能力が君の歌声の役目を最大限に伸ばしてくれました。

そして、曲に対する理解と表現力も素晴らしい。
音楽に対して心を開いているんだという事が、見てるこっちがもう、理屈抜きで分からされる瞬間がいくつもあります。

君も、音楽との距離が最も近いメンバーの1人です。そういった意味で、今回のCチームは本当に強かったですね。


ダンスにおいてはまだまだ追いついていない部分があると思います。ただ、合宿初日の動きからは想像できないほど、基礎がしっかりと身についているのも確かです。

このまま実直に努力を続ければ、君のポテンシャルに結果がついてくるときは近いと感じました」




ありがとう、と、メガネ越しの日高さんの目が細まった。
3次審査の時のようなキラキラ笑顔ではなかったが、その目には涙のようなものが浮かんでいて、YOLOがどれだけこの人に感動を与えたのかを語るには十分だった。


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