マジックアワー2【THE FIRST】

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(頼って、か……)




この合宿に来てから度々感じていた、舜斗の私に対する不満は、ここから来ていたのかと思ったりもして…
幼馴染って凄いな…と感心してしまう。

それと同時に、舜斗が言ってくれた言葉に応えられない自分がもどかしい。




「……わからないの」




両肩に置かれた彼の手の上に、自分の手を重ねる。




「なんで笑えないのか、」

「っ、」

「ごめん、舜斗……」




私も出来ることなら、頼りたかった。

心から込み上げてくる何かが、喉の辺りにつまって上手く面に出ない。その代わりにギュッと指先に力を込めたら
握っていた舜斗の右手が動いて、私の頬の辺りまで上がってきた。

まるで 大切な割れ物を扱うかのようなその手つきに 思わず小さく身を捩れば、今度は左手でうなじを支えて。逃げられないほど近い距離で見つめてきた黒い目は、今にも泣きそうなほど水分を含んで潤んでいる。




「なら、分からせてやる」

「っ、」

「それで俺と一緒なら、また笑えるって、思わせてやる」

「……」

「だからもう二度と、消えないで。」




“俺のそばから離れないで”


掠れた低い声で放たれた、照れてしまいそうなほどクサい台詞。その意味をわかった瞬間に、途端に頬が熱くなるのを感じた。

目を泳がせる私に、舜斗も自分が何を言ったのか自覚したのだろう、慌てて距離を取って「ちが、これは…！」と、言葉を詰まらせた。




「……普段からそんな感じのこと言ってるの？」

「そんなわけないだろ！」

「もう、ほんと…気をつけた方がいいよ…」




熱い頬に自分の手のひらを当てて、舜斗に背を向ける。
あんな、泣きそうな目で、告白みたいなこと。その場の勢いで言ったにしたって、心臓に悪すぎる。
中1以降の舜斗は知らないけど、あんな感じで女の子をたらし込んでいるのかな…。




「……おい」

「……」

「ねえ、おい。」

「…なんでしょう」

「ハッタリじゃないからね。言ったことはマジだから」

「どこからどこまで？」

「チッ……全部だよ」




背後から、唸るような声と舌打ち。
え？それが頼りを求めている方の態度？人のこと言えないけど、情緒不安定なんじゃないの。




「ならもうちょっと、優しくしてくれないかなぁ？」

「十分優しいでしょ」

「痛い痛いっ！」




不満げに振り返ったら、いつの間にかいつもの調子に戻った舜斗が、私の頬をつねってきた。ちょっと、せっかく熱が引いてきたのにまた赤くなっちゃうよ！


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